日本の最先端の蓄電技術を生かした実証プロジェクトがドイツで4月から始まる。風力発電所が数多く集まる北西部のニーダーザクセン州の沿岸部に大容量のリチウムイオン電池とナトリウム硫黄電池を設置して、地域の電力供給を安定化させる4通りの機能を3年間かけて実証する予定だ。
ドイツは再生可能エネルギーの拡大と原子力からの脱却を柱に、国全体のエネルギーの需給構造を抜本的に変革する「エネルギーヴェンデ(Energiewende)政策」を2010年から推進している。2014年の時点で再生可能エネルギーの比率は26.2%に達して、その中で最も多くの電力を供給しているのは風力だ(図1)。
ドイツでは風況の良い北海に面した北西部に風力発電所が集まっていて、その中でも最大の集積地がニーダーザクセン州である(図2)。日本のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)とニーダーザクセン州の経済・労働・交通省が3月19日に協定を結び、日本のメーカーの蓄電池システムを使って電力の需給状態を安定化させる実証事業に取り組むことになった。
実証事業はニーダーザクセン州の中でも北部にあるファーレル市で実施する。日本からはNEDOの委託を受けた3社が蓄電池と電力を安定化させる制御システム(GCS、Grid Control System)を現地で構築する予定だ(図3)。蓄電池はリチウムイオン電池とナトリウム硫黄(NAS)電池の2種類を組み合わせる。
風力発電や太陽光発電の急激な出力変動をリチウムイオン電池に充電・放電して吸収する一方、長時間にわたる電力の需給バランスを大容量のNAS電池で制御する仕組みだ。日本では離島の再生可能エネルギーを拡大する対策として、2種類の蓄電池の組み合わせによる実証事業を島根県の隠岐諸島で2015年度から実施している(図4)。
ニーダーザクセン州の実証プロジェクトではリチウムイオン電池を日立化成、NAS電池を日本ガイシが担当して、電力を安定化させるGCSを日立パワーソリューションズが構築する(図5)。一方のドイツ側はニーダーザクセン州の電力供給を担う管理組合(EWE-Verband)がグループ企業と共同で実証事業に参加する体制だ。
日立化成と日本ガイシは日本国内でも蓄電池システムを使った電力供給システムで実績がある。日立パワーソリューションズは茨城県の大沼工場に風力発電と太陽光発電を導入して、ガスエンジン発電機と蓄電池を組み合わせて電力を安定供給するスマートグリッドシステムを運営している(図6)。
再生可能エネルギーの導入で先進的なドイツを舞台に、日本のメーカー3社の製品と技術を生かした最先端のスマートグリッドシステムを実証するプロジェクトになる。実証期間は2017年4月から2020年3月までの3年間の予定で、ニーダーザクセン州内の電力需給バランスの最適化に取り組んでいく。
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