洋上風力発電を爆発的に拡大するプロジェクトが明らかになった。オランダ、デンマーク、ドイツの送電系統運用者が手を結び、北海の中央に人工島を建設。約1万基の風力発電タービンと接続し、周辺6カ国に電力を供給する。なぜ人工島が必要なのか、コスト高にはならないのか、プロジェクトの内容を紹介する。
欧州6カ国からほぼ等しい距離にある北海洋上に幾つかの「人工島」を建設。洋上風力発電を用いて、最大1億人に100GW(1億kW)の電力を供給する(図1)*1)。実に気宇壮大なプロジェクトだ。オランダとデンマーク、ドイツ、英国、ノルウェー、ベルギーが恩恵を受けるという。
人工島1つあたり、約1万基の風力発電タービンを接続し、30GWの電力を得る。風車1基当たり3MWという想定だ。
*1) 最大規模の原子炉に換算して約100基分に相当する。6カ国の人口は合計約1億8000万人。
プロジェクトを主導するのはオランダ、デンマーク、ドイツにそれぞれ電力を供給する送電系統運用者(TSO:Transmission System Operator)。2017年3月23日、3社のTSOが協定を結び、「北海風力発電ハブ(North Sea Wind Power Hub)」の建設に向かって調査に取り掛かることを発表した。
3社とはオランダTenneT TSO、デンマークEnerginet.dk、ドイツTenneT TSO。欧州連合(EU)の副委員長でエネルギー同盟委員でもあるMaroš Šefčovič氏が参加した(図2)*2)。
*2) 2016年6月6日に発表された北海諸国間のエネルギー協力に関する欧州政治宣言を受け、TenneT TSOが同6月13日に今回のプロジェクトのコンセプトを明らかにしている。「パリ協定(COP21)」で定められた2050年の気候変動抑制目標にかなった計画だ。
TenneT TSOのCEOを務めるMel Kroon氏は発表資料の中で次のように語っている。「Energinet.dkとの協力は、北海諸国に拠点を持つ他のTSOやインフラ企業が今回のイニシアチブに加わることを促すものだ。究極の目標は、欧州のエネルギー転換を低コストで実行可能にする、このような強力な企業連合を構築することだ」。
建設を予定する北海は、主に5カ国の排他的経済水域に占められている。建設予定地は複数の国の水域内にまたがる可能性がある。同氏によれば、今回のプロジェクトでは発電した電力と水域との関係を独立にすることが重要なのだという。
Energinet.dkのCTOであるTorben Glar Nielsen氏の発言はこうだ。「北海の中央に人工島を建設するとは、まるでSFのプロジェクトのように聞こえる。だが、実際には北海沿岸諸国にとって電力需要を再生可能エネルギーに転換していく、非常に効率的で手ごろな方法だろう」。
今後、北海風力発電ハブ計画を実現するための調査に数年を費やし、建設計画に合意できれば、2035年までに完成するとした*3)。
*3) 人工島の建設予定地は豊富な漁場としても知られており、海洋動植物に与える影響を調査する必要がある。TenneT TSOは既に環境NGOと協力関係を持ち、生物多様性リスクを明らかにするとした。
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