産業革命以来で初、英国で24時間「石炭火力ゼロ」を記録 : エネルギー管理
2025年までに石炭火力の撤廃を掲げる英国で、2017年4月21日は記憶に残る一日となった。18世紀の産業革命以来で初めて、24時間連続で石炭火力発電を稼働させない日になった。
脱石炭火力を掲げている英国で、歴史的な記録が誕生した。2017年4月21日が、産業革命以来で初めてとなる、24時間連続で石炭火力発電が稼働しない日になったという。英国の大手送電事業者であるNational GridがTwitterで報告している。
報告したのはNational Gridの制御システム部門。既に電力自由化を迎えている英国において、送配電事業を担っている企業である。なお、これまで英国の発電で石炭火力発電所が稼働しない時間の最長記録は19時間だったという。
英国は2015年に、2025年までに石炭火力発電所をすべて閉鎖するという目標を発表した。目的は地球温暖化対策だ。より環境負荷の小さい天然ガス発電所や、CO2を排出しない再生可能エネルギー、原子力発電所などにシフトしてく方針である。
英国政府が発表している統計資料によると、2016年10〜12月期における電源構成のうち、石炭が占める割合は9.3%だ。その他は天然ガスが45.2%、原子力発電所が20.3%、再生可能エネルギーが22.2%である。
≪英国の電源構成。2016年と2015年の4Q比較(クリックで拡大) 出典:
昨年の同時期と比較すると、石炭の割合は19.2%であり、1年で半減していることが分かる。さらに天然ガスの割合は1.5倍に増えている。政策方針が1年で如実に電源構成に反映されている。2025年に向けて、今後も石炭の割合はほぼ確実に下落する見込みだ。
英国の電源構成の推移(クリックで拡大) 出典:ENERGY TRENDS MARCH 2017」
英国の他、フランスは2023年、カナダは2030年までに石炭火力を撤廃する方針を掲げている。一方、日本政府の方針は定まっていないというのが現状だ。経産省と環境省の方針が一致しない状況が続いている。
現在も多くの石炭火力の建設計画が進んでいるが、最近では関西電力が兵庫県赤穂市の火力発電所である「赤穂発電所」の石炭への燃料転換を中止。さらに東燃ゼネラル石油と計画していた千葉県市原市での新設計画も中止すると発表した。加えて2017年3月に仙台市が全国で初めて、石炭火力の建設における市の環境影響アセスメント対象を定める規模要件を撤廃。全ての規模の石炭火力をアセスメント対象を拡大することを決めるなど、風当たりは強まっている。
石炭火力発電に国の方針が定まらず、原子力と合わせて見直し急務
環境省が石炭火力発電所の新設に難色を示し続けている。国のCO2排出量の削減に影響を及ぼすからだ。しかし最終的な判断を担う経済産業省は容認する姿勢で、事業者が建設計画を変更する可能性は小さい。世界の主要国が石炭火力発電の縮小に向かう中、日本政府の方針は中途半端なままである。
関西電力の「赤穂発電所」、石炭への燃料転換を中止
関西電力は兵庫県赤穂市の火力発電所である「赤穂発電所」の燃料転換計画の中止を発表した。石炭への切り替えを中止し、これまで通り重油・原油を利用した運用を継続する。関西の電力需要の減少や、CO2排出量の削減に向けた対策の強化が求められていることなどが理由としている。
石炭火力「全廃」へ、英国・フランス・カナダ
フランス、英国、カナダが石炭火力発電を廃止する政策目標を発表した。フランスは2023年、英国は2025年、カナダは2030年を目標とする。なかでも具体的な政策の内容に踏み込んだのは英国だ。英国政府は、老朽化していない石炭火力発電所を全廃する方法について、2つの政策オプションを提示。コストやエネルギー保障の観点から、国民が判断できる形とした。
中国とインドが悟る、石炭に魅力なし
全世界の石炭火力発電の状況をまとめた報告書「Boom and Bust 2017」は、計画段階から許認可、建設に至る世界的な動向に「乱流」が生じたことを指摘した。これまで増設に次ぐ増設を続けてきた中国とインドが方針を180度転換。OECD諸国と歩調を合わせた形だ。需給バランスや発電コストが主な要因だと指摘する。全世界で唯一、この流れに沿っていない国についても指摘した。
2040年のエネルギー、日本はどうなる
2040年のエネルギー動向をIEA(国際エネルギー機関)が予測した。前提となるのは2016年11月4日に発効したばかりのパリ協定だ。IEAが同11月16日に公開した「World Energy Outlook 2016」には、「石炭の時代」から、「天然ガス・風力・太陽光の時代」への転換が描かれている。だが、日本の政策目標はIEAの描く明るい未来からずれている。
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