海水と下水で「世界初」のCO2フリー水素製造、しょうゆ生産の技術を応用自然エネルギー(1/2 ページ)

山口大学などの共同研究体が、海水からの食塩製造や醤油の脱塩などに利用される「電気透析」という技術を応用したCO2フリー水素製造システムの開発を進めている。このほど国交省のB-DASHプロジェクトに採択され、実用化調査に着手する。海水と下水だけで水素を生み出すことが可能で、実用化できれば「世界初」の技術になるという。

» 2017年05月11日 07時00分 公開
[陰山遼将/長町基スマートジャパン]

 山口県はこのほど山口県産業技術センターがコーディネートし、山口大学や企業などと共同提案した塩分濃度差を利用する水素製造技術が、国土交通省委託事業の「平成29年度下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)・FS調査」に採択され、周南市で実用化調査を実施することが決まったと発表した。

塩分濃度差を利用した水素製造システムの導入イメージ (クリックで拡大) 出典:山口県

 同県では「やまぐち次世代産業クラスター構想」の推進および「水素先進県」の実現に向けて、県や関係省庁の補助制度を活用し、産学公連携による研究開発・事業化促進に取り組んでいる。

 今回採択されたのは下水道事業での低炭素・循環型社会の構築などに向けた、実規模レベルのプラントを用いた実証の前段階として実施する調査・研究事業。新技術に関する導入効果などを含めた普及可能性の検討や技術性能の確認を行う。提案者(実施事業者)は代表機関の山口大学および正興電機製作所山口営業所と日本下水道事業団を共同研究機関とした共同研究体。

 事業では下水処理水と海水の塩分濃度差、下水処理場の立地条件、下水処理水のポテンシャルを生かした「世界初」(山口県)となる新たな水素製造技術の実用化について、徳山東部浄化センター(周南市)で水素発生量、水素純度などの技術的な性能を調査し、各種設計条件について検討する。

 「世界初」をうたう水素製造システムは、海水からの食塩製造、醤油の脱塩などに利用されていた「電気透析」という技術を応用。下水処理水と海水の塩分濃度差を利用してCO2フリーな水素製造を行うというユニークな技術だ。

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