海を未来の電源に、IHIの海流発電システムが実証段階へ自然エネルギー(1/2 ページ)

IHIが、NEDOプロジェクトで開発を進めていた海流発電システムの実証機が完成した。海底アンカーに接続し、たこのように水中に浮遊させるのが特徴のシステムで、2017年夏に鹿児島県の実海域で実証試験に入る。実際に海流を利用した100kW(キロワット)規模の海流発電実証は、世界初だという。IHIは2020年までに実用化する方針だ。

» 2017年07月10日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 海に囲まれた島国である日本において、海洋エネルギーの活用は次世代のエネルギー源として大きなポテンシャルを秘めている。だが、太陽光や風力などの他の再生可能エネルギーと比較すると、発電技術およびコストの両面で具体的な手法は確立できていない状況だ。

 そこで新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2011年度から海洋エネルギー利用技術の研究開発プロジェクトを立ち上げ、日本企業の技術開発を支援している。欧米では波力を中心に海洋エネルギー発電システムの開発や実証が進んでおり、「日本でも海洋エネルギー利用技術の開発が急ぎの状況に」(NEDO)という。

 このほど同プロジェクトで海流発電装置の開発を進めていたIHIが、100kW(キロワット)級の実証機を完成させ、2017年7月7日に報道陣に公開した。夏に鹿児島県で実証を行う計画だ。実際の海流を利用した100kW規模の海流発電の実証は「世界初」(IHI、NEDO)だという。日本近海に眠る海洋エネルギーの有効活用に向け、大きな期待が掛かる実証だ。

IHIが開発した海流発電装置「かいりゅう」(クリックで拡大)
「かいりゅう」の概要(クリックで拡大)

 海洋エネルギーを利用した発電の手法は複数ある。波のエネルギーを利用する波力発電、潮の満ち干きによる海流の動きを利用した潮流発電、そして一方向に流れ続ける水流を利用する海流発電などだ。IHIが開発したのは海流発電装置で、名称は「かいりゅう」。名前は実証を行う鹿児島県十島村(としまむら)の小学生から公募した。

 開発した発電装置は、海底に設置するシンカー(おもり)と特殊なロープで接続し、水中に浮遊させるように設置する。海面から30〜50メートルの深度で、直径11メートルのタービンを備える2つの水車を海流で回転させて発電する。発電した電力は海底送電ケーブルを通して、陸上の受電設備に送電する仕組みだ。400V(ボルト)で発電し、6600Vに昇圧して送電する。こうした発電システムは、水深1000メートル程度まで設置可能。発電装置本体は海面から数十メートルの深度に位置するため、船舶の航行などへの影響も回避できるとしている。

実証機のサイズと設置イメージ(出典:NEDO)

 発電装置全体の幅・全長はそれぞれ20メートルで、定格流速は1.5メートル/秒。海流の速度が一定以上になった場合、タービンの角度を調整して回転数を落とし、発電機を守る仕組みになっている。左右2基の水中タービン水車はたがいに逆方向に回転する。これにより回転トルクを相殺し、海中で安定した姿勢を保持することで発電効率を高めるという。浮力を調整する機能も備えており、メンテナンスを行う際には海面に浮上する。

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