海を未来の電源に、IHIの海流発電システムが実証段階へ自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2017年07月10日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]
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鹿児島県沖で実証へ

 IHIとNEDOは2017年7月から、実際の海域を利用して開発した実証機の実証試験に着手する。実証場所は政府から「海洋再生可能エネルギー実証フィールド」に選定された、鹿児島県十島村の口之島(こうのしま)だ。黒潮が流れるこの海域の沖合5キロ、水深100メートルの地点に発電機を設置する。

実証試験を行う場所(出典:NEDO)

 まずは2017年7月下旬から、鹿児島県いちき串木野市「串木野港」の沖合で1週間程度の曳航(えいこう)試運転を行い、その後8月中旬から口之島沖に移動して1週間程度の実証試験を実施する計画だ。発電性能や姿勢制御システムの性能などについて検証する。

将来は4倍に巨大化

 さまざまな再生可能エネルギーの利用において、気になるのが発電コストだ。IHIは今回の100kW級の実証機はあくまでも発電システムの性能検証が目的であり、コスト面だけに着目すると、現時点では他の発電方法より「非常に高い」(同社)という。

 発電コストを下げるためには、システムの費用を下げつつ発電量(設備利用率)を高めていく必要がある。海流発電は設備利用率の面では、他の太陽光や風力より有利だ。IHIによれば太陽光や風力が20%前後の設備利用率なのに対し、日本近海での海流発電は40〜70%の設備利用率が見込めるという。

 システム費用については、発電設備の大型化、つまりは出力の増強によって1kW当たりの単価を下げていく方針。IHIでは今回の実証試験を経て、2020年までに海流発電システムを実用化する方針を掲げている。その後2020年代に発電システム1基当たりの規模を、実証機の20倍に相当する2000kWまで高める方針だ。この場合、タービンの大きさは約40メートルになるという。こうしてNEDOが目標とする、1kWh当たり20円という発電コストに近づけていく考えだ。

 ただ、こうしたシステムのコストだけでなく、メンテナンスの手法やコストの検証、周辺環境への影響評価や漁業権との兼ね合いなど、実用化に向けた課題はまだ残っている。だが、季節や天候の影響を受けにくい海流は、未来のベースロード電源としての期待も大きい。特に日本近海を流れる黒潮は、世界トップクラスの大きなポテンシャルを持つ海流とされており、大きな再生可能エネルギー源として注目されている。日本近海の大規模な未利用エネルギーを生かすための第一歩として、実証の成果には大きな期待が掛かる。

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