アンモニアをクリーン燃料に変える新触媒、熊本大が開発蓄電・発電機器

熊本大学の研究グループが燃えにくい性質のアンモニアを、有毒ガスを出さずに燃焼させられる新触媒を開発。化石燃料の代替としての利用など、アンモニアの用途の幅を広げる成果だという。

» 2018年04月17日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 熊本大学の研究グループは2018年4月、有毒ガスを排出せずにアンモニアを効率よく燃焼できる新しい触媒を開発したと発表した。低コストに製造でき、燃料としてのアンモニア利活用の幅を広げられる可能性があるという。

 近年、化石燃料に変わる新燃料の1つとして、燃焼時にCO2を一切排出しないアンモニアが注目されている。CO2排出量の削減を目的に、石炭火力の燃料としてアンモニアを混焼する実証実験も行われている。また、水素を低コストに貯蔵・輸送するためのエネルギーキャリアとしての利用も期待されているところだ。

 ただし、アンモニアは窒素を含んでいるため、燃焼時に大気汚染などにつながる窒素酸化物が生成される可能性がある。さらに、燃焼開始温度が高く、燃えにくい点が課題となっている。

 熊本大学の研究グループは、こうしたアンモニアの利用に関する問題を解決する「触媒燃焼法」について研究を進めてきた。これは燃料などを燃焼処理する際に、化学反応を促進したり抑制したりする物質を触媒として加える手法だ。その中で今回、アンモニアの燃焼性を向上させると同時に、窒素酸化物の発生を抑える新しい触媒の開発に成功。さらに燃焼反応機構も明らかにした。

開発した触媒と燃焼反応機構の概略図.出典:熊本大学

 新規触媒は、ムライト型結晶構造体に酸化銅を担持している(CuOx/3A2S)。この新規触媒を使用してアンモニアを燃焼させたところ、高活性かつ窒素酸化物を排出しないよう窒素を選択的に生成でき、触媒自体は高温下でも変質しないことが分かった。

 市販されている一般的な材料を利用でき、酸化銅も工業的にも広く用いられている「湿式含浸法」によって担持できるため、簡易かつ低コストで製造可能という。この触媒を活用することでアンモニアの燃料としての利用や、その熱を利用した水素製造など、活用の幅を広げられるとしており、今後はより実用に近い条件で研究開発を行う計画だ。

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