発電事業者に系統費用の負担を義務化、再エネ電源も対象にエネルギー管理(1/2 ページ)

政府は送配電網の利用料である託送料金に関する制度を、2020年をめどに刷新する。現在、託送料金は小売電気事業者が負担しているが、再生エネルギーを含めた発電事業者にも負担を義務付ける方針だ。

» 2018年04月19日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 送配電網の利用料として、維持管理などに充てられる「託送料金」。現在は小売電気事業者が電力会社に支払う仕組みになっているが、政府は2020年の早期に発電事業者に対しても負担を義務付ける「発電側基本料金」制度を導入する。「再生可能エネルギーの固定買取価格制度」(FIT)を利用した発電事業も対象となる。送配電網の維持管理費用の負担を公平化するとともに、再生可能エネルギーの導入拡大に備え、系統への設備投資の促進や利用効率の向上を後押しする狙いだ。電力・ガス取引監視等委員会が2018年4月16日に、託送料金に関する将来の制度案について、今後の方針案を公表した。

 人口減少や省エネの進展によって、日本の電力需要の伸びは頭打ちと見られている。一方、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う系統連系ニーズの拡大、老朽化による修繕や交換が必要な設備の増加など、今後の送配電網に関連する費用は増加が見込まれている。

 だが、費用を確保するために託送料金を単に値上げすれば、小売電気事業者の負担が増え、市場競争に影響が出てしまう。こうした状況の中で託送料金を最大限抑制するためには、一般送配電事業者の経営効率化に加え、送配電網の効率的な利用の促進が欠かせない。同時に、再生可能エネルギーの導入拡大に対応すべく、送配電網に必要な投資が行われるよう、維持・運用費の回収確実性も高める必要がある。

 こうした背景のもと、電力・ガス取引監視等委員会は新しい託送料金制度の在り方を議論してきた。主な論点は2つ。現状の送配電網の維持管理・費用の負担方法の見直しと、送配電網の効率的な利用を後押しするインセンティブ制度の設計だ。

発電事業者側の負担費用はkW単位で算出

 現状、送配電網の維持管理費用は、託送料金として小売電気事業者が負担している。託送料金は電気料金のベースとなるため、需要家側が負担しているともいえる。一方、電力の供給を行う発電側の事業者は、電源の系統接続時の初期費用を工事費負担金として一部負担しているものの、それ以外の継続的に発生する維持管理費用については、一切負担していない。

 そこで新しい制度では、2020年以降なるべく早い時期をめどに、発電側にも発電側基本料金として負担を求める。負担の対象とする費用は、「発電側・需要側の両方で等しく受益していると考えられる設備の固定費」とする。具体的には配電網以外の、基幹系統および特別高圧系統に関連する設備の固定費が対象となる。負担額は、電源の規模に応じてkW(キロワット)単位で算出する方針だ。kW課金として導入することで、発電事業者側に設備利用率の向上などを通じた送配電網の効率的な利用を促す狙い。

現行制度における送配電網の維持管理費の構成と、発電側基本料金が対象とする費用のイメージ。数値は電力10社の合計値 出典:電力・ガス取引監視等委員会

 発電側基本料金の対象とする電源は、系統に接続し逆潮を行っている全ての電源となる。つまりFIT電源についても、他の電源と一律にkW単位で発電側基本料金を求める。ただし、FITは20年間の買い取り価格が決まっているため、他の電源のように発電側基本料金による追加コストを転嫁できない。そこで「FIT認定を受けて既に調達価格が確定している電源」「発電側基本料金の導入後にFIT認定を受ける電源」それぞれ対する調整措置などの詳細を、調達価格等算定委員会で検討していく。

 現在、発電事業者が系統接続時に支払う初期費用の一般負担上限については、限設備利用率に応じて電源種ごとに傾斜が設けられている。今後、発電側基本料金の導入に伴い、初期費用の負担上限についてもkW一律で算出し、負担を平準化する方針だ。

 なお、エネルギーの地産地消モデルなど、需要(順潮)と発電(逆潮)が同一地点にある場合は、需要側の順潮を上回る発電側の逆潮分について、発電側に負担を求める。ただし住宅太陽光など、需要と同一地点における系統への逆潮が10kW未満の小規模電源については、コスト面に考慮し、当面は発電基本料金を求めない方針だ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.