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» 2018年05月23日 07時00分 公開

自然エネルギー:再エネ価値の取引市場、初入札は低調な結果に

再生可能エネルギー電源の価値を取引できる「非化石価値取引市場」の初入札が、2018年5月中旬に実施された。結果は約定率が0.01%程度と低調で、入札価格の設定など、今後の課題が浮き彫りとなった。

[陰山遼将,スマートジャパン]

 太陽光や風力などの再生可能エネルギーの環境価値を取引できる、新しい仕組みとして期待されている「非化石価値取引市場」。JPEX(日本卸電力取引所)が2018年5月中旬に実施された初入札の結果を公表したが、落札社数は26社、約定量は515万5738kWh(キロワット時)と、非常に低調な滑り出しとなった。

 非化石価値取引市場は小売電気事業者を対象とした制度で、再生可能エネルギーや原子力などのCO2を排出しない電源の価値を、「非化石証書」の形で取引できる。小売電気事業者はこの証書を購入することで、「エネルギー供給高度化法」に基づく非化石電源の調達義務量の達成や、需要家に対して環境価値の高い電力を販売していることをアピールできるようになる。

非化石価値のイメージ 出典:JEPX

 当面、非化石価値取引市場で取引されるのは、再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)の認定を受けた発電設備由来の電力、通称「FIT電気」の非化石価値だ。原子力などのFIT電源以外の取り扱いについては今後議論される予定となっている。今回行われた入札では、2017年4〜12月に買い取った500億kWh以上ものFIT電気の非化石価値が対象となった。

 しかし結果は約定量が515万5738kWh、約定率に換算すると0.01%程度にとどまった。非化石価値取引市場は、小売電気事業者が支払う非化石証書の費用をFIT賦課金に充てることで、国民負担の軽減を図るという狙いもある。しかし、今回の約定量加重平均価格は1.3円/kWhで、国民負担の低減効果は670万円程度だ。

 入札のネックになったとみられるのが、事前に設定されている最低入札価格だ。今回の最低約定価格は1.3円/kWhだったが、これは非化石証書と同じように環境価値を取引できる「J-クレジット制度」と比較しても割高な設定となっている。非化石証書はJクレジット制度やグリーン電力証書などと比較して大量に発効されるため、まとまった量を確保しやすいメリットがある。しかし、今回は費用対効果の面でのメリットが少なく、入札を見送ったという声もある。

 再生可能エネルギーを活用したい企業(需要家)から見た、非化石証書の位置付けにも課題が残っている。例えば事業に必要な電力を、100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が参加する国際イニシアチブ「RE100」において、現時点では非化石証書による調達が認められるかは定まっていない。非化石証書には太陽光や風力といった再生可能エネルギーの種類、発電設備の立地といった情報が含まれないからだ。一方、J-クレジット、グリーン電力証書は発電設備を特定できる。

 近年、RE100に加盟する日本企業が増えており、事業に再生可能エネルギーを活用したいというニーズも高まりつつある。今後、非化石証書の位置付けや、電源の情報を保証する仕組みが定まれば、需要家側は証書を利用した電力をより購入しやすくなる。需要が高まれば、小売電気事業者の入札意欲の促進も期待できる。なお、NGO(非政府組織)の英CDPは非化石証書の活用を認めている。

 今後の非化石価値取引市場は、2018年1月以降のFIT電気の買取量を3カ月分まとめて、3カ月ごとに非化石証書の入札を実施する予定だ。2018年度の第1回入札は8月を予定している。

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