CDPの質問書が最初に配布されたのは2002年。既に16年が経過したが、その間にCDPの質問内容や評価方法は、この分野の急速な変化に合わせるかのように何度も変更がなされている。2018年における質問書も、前回から大幅に改定された。特に大きな変更と呼べるのは、前述のTCFDの提言を反映した設問が導入された点である。
TCFDは、COP21が行われた2015年12月に、G20財務大臣・中央銀行総裁の要請を受け「FSB(Financial Stability Board:金融安定理事会)」の下に発足した民間主導のタスクフォースで、企業に対して気候関連のリスクと機会が企業財務にもたらす影響(気候関連財務情報)を開示するように促すことを目的としていた。そもそもFSBは、世界主要25カ国・地域における中央銀行、金融監督当局、財務省、世界銀行などの代表が参加し、金融システムの安定をめざす目的で設立されたものである。このような組織の下にTCFDのようなタスクフォースが発足したということからも、国際社会が金融システムの安定化のために気候関連財務情報の開示が必要不可欠という認識を持っていることがうかがえる。
さて、このTCFDは、2017年6月に最終報告書を公表した。この提言では、個々の企業が気候変動リスク・機会による財政上の影響を、損益計算書、キャッシュフロー、貸借対照表などの財務報告において公表することを求めている。CDPは、早くも2018年の質問書から、このTCFDの提言を取り入れ、質問項目を刷新した。これは、機関投資家が各企業に対しTCFD提言に沿った情報開示の取り組みを強化するよう、強い要請を行っていることの証左でもあり、気候関連財務情報の開示状況がなおもって株価に強い影響を与える時代が来ていると言えるだろう。2019年の質問書も、2018年12月には開示される予定である。
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