ある市場調査によれば、ウェアラブルAI市場は2031年までに約2200億ドル(約34兆円)にまで達すると見込まれている。その多くが従来のウェアラブルデバイスの延長線上にあるもので、健康管理やスケジュール管理といったおなじみの機能を、AIを使ってさらに高度化した製品となっている。
一方で前述のAI Pinのように、自然言語によるユーザーとのやりとりや情報検索・回答といった、最近の生成AIがPCの中で実現している機能を、持ち運びできるデバイスとして実現するものを目指す製品も登場している。それらが一体となって、今後ウェアラブルAI市場を形成するというわけだ。
その形態も多様で、Apple Watchのようなスマートウォッチ、眼鏡型のスマートグラス、AirPodsのようなスマートイヤーウェア、手袋型のスマートグローブ、その他(指輪型のスマートリングなど)などが挙がっている。
AI PinやLimitless Pendantのような衣服に装着するタイプ(Limitless Pendantはその名の通りペンダントのように首にかけることも可能)が新たに登場していることを考えると、今後もさまざまな形態が現れることは間違いなさそうだ。
こうしたウェアラブルAIの魅力は、何と言っても瞬時に必要な情報が得られるという点だろう。例えば次の動画は、シンガポールのAI企業・Brilliant Labsが発表した眼鏡型ウェアラブルAI「Frame」の紹介動画である。
この中でFrameの使い方として、目にしているものが何であるかの確認や、翻訳、食品の栄養成分の把握、Web検索といった例が挙がっている。これらは以前からスマートグラスの未来像として掲げられてきたものだが、ようやく現実が追い付いてきたわけである。
プレスリリースによれば、Frameは独自開発したマルチモーダルのAIアシスタント「Noa」を搭載しており、リアルタイムの視覚処理、新規の画像生成、リアルタイムの音声認識、翻訳が可能で、音声だけでハンズフリーの操作ができるようになっている。
ちなみにBrilliant Labsの共同創業者の1人も元Apple社員。純粋にAIというソフトウェアの開発能力だけでも勝負が可能な生成AIの分野と異なり「現実世界でハードウェアがユーザーにどう使われるのか」という知識も必要となるウェアラブルAIの分野では、ハードウェアも手掛ける企業に勤めていた経験が生きてくるのだろう。
その意味では、日本の家電系の企業や、その中で経験を積んだ起業家たちにも十分にチャンスがあるのがウェアラブルAIなのかもしれない。
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