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スマホの次は“身に着けるAI”の時代到来か 「ウェアラブルAI」続々登場 企業はどう向き合う?小林啓倫のエマージング・テクノロジー論考(3/4 ページ)

» 2024年04月25日 12時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

警察官が着用する「ボディカム」は間もなく1兆円市場へ

 実はウェアラブルAIには、既に巨大な市場として成立している分野がある。それは警察官が着用する「ボディカム」と呼ばれるデバイスだ。

Amazonでの「ボディカム」の検索結果

 これはボディカム(Body Camera)という名前の通り、身体に着用する小型のカメラで、身体装着型ビデオ(Body Worn Video)などとも呼ばれている。一部の国々で警察官への着用が義務付けられており、捜査中の証拠集めだけでなく、捜査の透明化や警察官による不正の防止といった目的のために使われている。

 しかし膨大な数の警察官が着用し、彼らが活動しているあいだ四六時中撮影するとなると、蓄積される映像データは途方もない量になる。その全てを人力で確認するわけにもいかないため、いま米国の警察では、映像の解析をAIに任せようという取り組みが進んでいる。

 例えば次の映像は、米国のニュース番組「FOXニュース」が報じた「Trulio」というAIを活用した事例だ。この中では、AIが映像を分析し、警察官の望ましい行動(礼儀正しさや感謝の気持ちなど)と望ましくない行動(侮辱や冒涜、脅迫など)を把握した上で、一覧化して監督者に報告を行っている。

 米国のWebメディア「The Intercept」の報道によれば、警察用ボディーカムの市場は既に数十億ドルの規模に達しており、26年までに70億ドル(約1兆円)を超えると見込まれている。当然のことながら、こうした明確なメリットやユースケースが存在する分野で、組織的な導入が進むと、それだけ市場の形成も早く進むといえる。

 ただウェアラブルAIは、一般の企業に対しては難しい判断を迫るものになりそうだ。警察用ボディーカムの事例でも、その映像や音声をAIが把握することについて賛否が分かれている。

 確かに効率的な解析は可能になるかもしれないが、これまで(単に人間がチェックする時間が無いという理由で)明らかにされていなかったプライバシーが掘り起こされ、AIモデルの偏見などの原因から誤った解析を行い、それが誤認逮捕につながったりするリスクへの指摘がある。

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