画像生成AI「Midjourney」で制作した作品を絵画コンテストに出品して優勝した米国のアーティストが、著作権登録が認められなかったことを不服として米著作権局を相手取り、裁判所に訴えを起こした。
米コロラド州在住のジェイソン・アレンさんは2022年8月、Midjourneyを使い生成し、Adobe Photoshopなどを使い仕上げた作品「Theatre D'opera Spatial」を同州のコンテストに出品し、デジタルアーツ部門で1位に選ばれた。AI生成絵画の受賞は初めてだったこともあり、このニュースは大きな論議を巻き起こした。
アレンさんは同年9月、米著作権局にこの作品の著作権登録を申請したが、12月に却下された。アレンさんは判断の再考を求めたが、23年5月に再申請も却けられた。「ささいな量を超すコンテンツがAIで生成されている」「人間の著作であるという著作権登録の要件を欠く」などの理由だった。
アレンさんは、著作権登録が認められなかったため、この作品が侵害されるようになったと訴える。他人が入賞作品のコピーを取り入れた「盗作」をSNSで公開したり、無断で複製されてマーケットで販売されたりしているという。
アレンさんは24年9月、Theatre D'opera Spatialの著作権登録を求めてコロラド州連邦地裁に提訴した。MidjourneyなどのAIツールを利用して制作したアートの展示や販売を行っているアレンさんは、著作権が認められなかったために、そうした作品で収益を上げることができなくなったと主張している。
「AIツールが社会にますます浸透する中で、司法判断が必要なときが来ている」とアレンさん。受賞作品の著作権登録申請については、メディアの否定的な報道を通じて注目を浴びたことで著作権局の判断に影響を及ぼし、好ましくない目で見られた可能性があると主張している。
「著作権審査員は多くの場合、AIツールを補助的に使ったアート作品と、コンピュータツールを一切使っていない作品を区別することさえできず、今回の審査プロセスは完全に恣意的だった」(アレンさん)
アレンさんによると、受賞作品の制作に当たっては、作品の構想を描いて色やスタイルなどを指定し、AIに指示を出しながら指定通りの画像を作成させる作業を何度も繰り返した。
満足のいく作品を仕上げるまでに624回ものプロンプトを繰り返した制作工程は「面倒で複雑でもどかしい作業だった」と振り返り「そうした意図的かつ繊細な人間の関与は、AIアートプログラムを効果的に使うために必要なクリエイティブスキルの証」だと強調する。
さらに「作者の心の中の具体的な画像を制作するために何百回も指示を出し、修正し、再度指示を出したプロセスは、著作権登録の条件とされる『最小限の創造的なひらめき』に該当する」と続けている。
アレンさんは自身の主張の裏付けとして、ソフトウェアの助けを借りて制作した写真や音楽の著作権登録を引き合いに出している。カメラで撮影する写真やシンセサイザー音楽などは、当初は芸術性や人間性を欠くとして批判の的になったが、今では著作権が認められて制作の支えになっていると指摘する。
「現代のわれわれは、先端技術に対する本質的な偏見という同じ問題に直面している。AIアートテクノロジーはまだ登場したばかりで広く受け入れられてはいないかもしれない。だが、創作過程に先端技術を使用したからといってアーティストの著作物でなくなるわけではない」(アレンさん)
アートを専門とする米メディアのHyperallergicによると、米国では過去にも同様の事例があった。別のアーティストがAIツール「DABUS」を使って制作した12年の作品についても、首都ワシントンの裁判所が24年9月に著作権請求を却下していたという。
こうした判断についてアレンさんの弁護士は「AIの助けを借りた作品は誰が所有者なのかという点において、空白を生じさせる」とHyperallergicにコメントしている。
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