漫画のデジタル配信を仲介するナンバーナイン(東京都品川区)は11月7日、子会社が運営する、絶版マンガなどをWebで配信するサイト「マンガ図書館Z」のサービス停止について声明を発表した。SNS上で「ナンバーナインが生成AIでアダルト作品を手掛けていたのが原因では」という投稿があったが、同社はこれを否定。虚偽情報の発信が続く場合、法的措置も視野に入れるとした。
マンガ図書館Zは、ナンバーナインの子会社・Jコミックテラス(東京都千代田区)が運営する絶版マンガなどの配信サイト。アダルトコンテンツの取り扱いを理由に、決済代行会社から10月末日で契約を解除すると通達を受けたことで、クレジットカードなどでの決済が不可能に。このため、11月26日をもってサービス停止にすると発表していた。
発表後、SNS上では「ナンバーナインが原因では」と吹聴するような投稿が拡散していた。投稿には「ナンバーナインが生成AIを使ったAIアダルト作品の配信を手掛けており、中にはリアルな子どもを出力したものもある」と記載があり、マンガ図書館Zとの関連が話題となっていた。
しかしナンバーナインは「マンガ図書館Zのサービス停止理由は、決済代行会社から契約解除となったことが大きな要因。親会社である弊社がクレジットカード会社などから取引停止措置を取られていることはない」と事実無根であると否定した。
ナンバーナインは生成AIを使った作品の扱いについても説明した。同社は、作家が権利を持つ漫画作品やイラスト集を取次を介して国内130以上の電子書籍ストアへ配信するサービスを展開している。扱う作品には生成AIを使ったものも含まれるが、生成AIを使っているか否かを問わず、法的な問題や倫理的な問題をはらむ危険性がある作品については、事前審査によって配信の可否を判断しているという。
ただし生成AIツールを使った作品については「特定のクリエイターへのなりすましや、そのような誤認の恐れがあるもの」「クリエイターの作品を無断で学習・模倣することにより、当該クリエイターの権利や利益が不当に害される可能性をはらむもの」の審査基準も追加で設けている。また、作品の紹介文には「AI作品」と明示することも作家に依頼していたという。
しかし、今回の件などを踏まえ、ナンバーナインは当面、生成AIデータを活用したデジタル作品の取り扱いを停止すると発表。理由として「AI技術の発展に対して法整備が追い付いていない状況下で権利侵害の有無を正確に判断するのが困難であること」「作家からAI作品の取り扱いについて不安視する声を頂戴していること」「不安定な状況のままサービスとして現状の基準を貫く道義が見つからないこと」の3点を挙げた。
一方で、生成AIによらないアダルト作品については、審査の抜け漏れがあったことも明らかにした。
ナンバーナインは「(漫画やイラストの)『ロリータ・ショタ』ジャンルの作品は、日本国内における各種法令と社会規範の観点から配信しない方針で運営している」としている。しかし、この方針に反して、ナンバーナインでは同ジャンルの該当作品を配信している事実があったという。
一部作品はすでに配信停止に向けて対応中。社内での審査体制の見直しと強化を行い、現在配信中の作品についても、配信継続の是非を検討するとしている。ナンバーナインは「アダルト作品の取り扱いについては、当初のサービス方針を徹底できていなかった点をおわび申し上げます」と謝罪した。
「弊社は、創業から今に至るまで作家さんが創作活動を続けられるよう、皆さまの権利を尊重しながら事業を運営してきた。この想いは今も昔も変わらない。そして、これからもよりよいサービスを提供できるよう社内で改善に努めていく」(ナンバーナイン)
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