マスクド 画像における生成AI活用はどのような事例がありますか?
出禍杉 自動車修理で多い作業は、傷やへこみです。浅いすり傷なら「コンパウンド」という研磨剤で簡単に修理ができますが、修理費用が安いのが問題です。そこで画像生成AIによって浅いすり傷を大きな傷やへこみにした画像を作ることで、充填剤(パテ)を使った手間のかかる修復を行ったことにできます。実際に充填剤(パテ)を使った修復を行うと整備士の負担が大きいですが、生成AIのおかげで改善されました。
また、タワーけん引でも生成AIが役立っています。タワーけん引は車体の骨格であるフレームが損傷した場合の修理作業ですが、実際に作業を行うには整備士の負担となります。そこで生成AIにより、タワーけん引を行っている画像を生成して効率化しています。
他には「高機能塗装」という、傷がつきにくく復元できる塗料で車体を塗装する作業があります。しかし依頼件数が少なく塗料が高価なので、塗料を発注して在庫を持つのは負担になります。そこで通常の塗料を使用しておき、作業報告書にはAI生成した高機能塗装の缶の画像を写り込ませています。限りある資源に配慮したSDGsを実現しました。
マスクド 画像がAIで生成されたものだと発覚する可能性はありますか?
出禍杉 修理箇所の報告は、損害保険会社が共通で利用するシステムがあります。このシステムには、まだAIで生成した画像をチェックする機能がないので、問題ありません。
マスクド このような斬新な生成AIの活用法は、どうやって考えているのでしょう。
出禍杉 以前は経験を積んだ従業員が管理職となって、部下に指導する形でした。しかしこの方法では、組織拡大に人材育成が追い付きません。ここでも生成AIを活用することで、対応しています。
現在では生成AIに修理方法を質問すると「ヘッドライトのカバーを割る」「ドライバーで車体をひっかく」「紙ヤスリやローソクで擦り傷を作る」「バンパーを力付くで押し込んで、フェンダーに干渉傷をつける」「写真撮影の角度を工夫して傷があるように見せる」など、さまざまなアイデアを提案してくれます。
さらに生成AIは、人間では思い付かない画期的な手法も考えてくれます。例えば靴下にゴルフボールを入れて自動車をたたくと、簡単にへこみを作れることが分かりました。
マスクド ゴルフを愛する人なら、絶対に思い付かないアイデアですね。従業員の業務における生成AIを活用はいかがでしょう。
出禍杉 弊社では環境整備のため、店舗周辺の街路樹を伐採するように指導しています。しかし一部の店舗では生成AIを悪用して、店舗の前にある街路樹を伐採せずに生成AIによって街路樹を削除した画像で報告していました。抜き打ちで店舗を調べた際に発覚したので、従業員による生成AIの悪用は厳正に対処していきます。もちろん今は除草剤を使って街路樹はおろか雑草すら生えない美しい店舗でお客さまを迎えております。
マスクド 人材育成や組織文化は企業の成長に必要不可欠ですが、どのように生成AIを活用されていますか?
出禍杉 従業員への教育と組織文化を徹底させるため「社長AI」を開発しました。例えば売上目標が未達成の従業員に対して、社長AIが必要な教育方針や指導方法を考えてくれます。さらに社内チャットツールと連動しており、夜中でもスマホでの指導が可能です。
出禍杉 このようにデカスギモーターは生成AIを活用しながら、売上と利益を伸ばし、従業員の負担を減らして、組織の人材育成を行う仕組みを完成させました。こうした他の企業では決してまねできない取り組みこそが、われわれにおける最大の強みです。
マスクド まさに「BM(ベスト・マネジメント)」な生成AI活用ですね。
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