生成AIの企業活用が進む現在、とある企業がAIを使って無断転用を行っているという報道があった。報道によると、他社サイトに掲載している口コミを生成AIを使って改変し、自社サイトに無断で転載していたという。
また生成AIで誤った情報を発信して、混乱を招いた事例もある。Webで地方の魅力をPRする「つながり応援プロジェクト」を運営するファーストイノベーション(東京都中央区)は11月、福岡県に関するPR記事に生成AIを利用。しかし記事内容に対して「実在しない祭りが開催されている」などの意見が相次ぎ、全ての記事を削除する事態となった。
(関連記事:生成AIで福岡のPR記事作成→“架空の祭りや景色”への指摘が続出 開始1週間で全て削除する事態に)
このように生成AIの活用方法を見誤り、他者に迷惑を掛けてしまう事例が発生している。そこで今回は「企業での生成AIの悪用例」を取り上げる。“架空の”中古車販売業者である「デカスギモーター」に対して、マスクド・アナライズさんが生成AI活用についてインタビューする……という創作話から、生成AIの悪用例や内部不正について考える。
以下、マスクド・アナライズさんが執筆した文章。
プロフィール
ITスタートアップ社員として、AIやデータサイエンスについてSNSによる情報発信で注目を集める。同社退職後は独立し、企業におけるChatGPT及び生成AIの導入活用やDX(デジタル・トランスフォーメーション)を支援している。企業研修において、JR西日本、シーメンスヘルスケア、日立製作所などの実績がある。イベント登壇はソフトバンク、特許庁、マクニカ、HEROZを含め多数。東京大学と武蔵野大学にて、特別講義を実施している。著書に「データ分析の大学」「AI・データ分析プロジェクトのすべて」「これからのデータサイエンスビジネス」がある。10月23日には最新書籍「会社で使えるChatGPT」を発売した。
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4492047794
X(旧:Twitter):@maskedanl
生成AIはさまざまな企業で導入活用されています。今回は中古車販売と修理工場の一体化で業績を伸ばしている、デカスギモーターさまの事例を紹介します。
自動車修理は専門技術が必要なだけでなく書類作成や保険会社への請求といった煩雑な手続きも多く、利益が出にくい構造といわれてきました。こうした逆境をものともせず業績を伸ばし続けるデカスギモーターさまは、どのように生成AIを活用しているのでしょうか。社長の出禍杉(デカスギ)氏にお話を伺いました。
マスクド 自動車の車検や修理において車体の整備作業だけでなく、交換した部品や修理箇所などのデータ登録といった手続きも煩雑とされています。こうした課題を生成AIによって、どのように解決していますか?
出禍杉 ご指摘の通り、保険会社に修理箇所の報告したり、修理に必要な部品を手配するなどの手続きが発生します。こうした報告や手続きにおいて、生成AIを活用しています。
マスクド 具体的にどのような方法でしょう。
出禍杉 例えば部品交換において、新品ではなく安価なリサイクル品を使用する場合があります。社内向けの報告書ではリサイクル品と記載しますが、保険会社やお客さまへの報告書では新品で交換したことにします。そこで社内用と社外用で2種類の書類が必要になりますが、生成AIを利用することで作業時間を短縮しています。
また、修理に不要な部品を購入した場合も、同様に2種類の書類を作成しています。その場合、故障している箇所と関連する部品でなければいけません。例えばタイヤ交換でエンジンの部品を購入するのは不自然です。そこでタイヤ交換ならホイールなど関連性が高い部品を請求するように生成AIが指示を出してくれます。
マスクド 修理や車検で突発的な依頼が重なると、想定以上に資格を持った整備員が必要になる場合があります。生成AIを用いた需要予測や人員シフト作成などの事例がありますが、デカスギモーターさまではどのように対処されていますか?
出禍杉 車検には国土交通省運輸局が定めた作業項目があります。しかし全て行うと手間や時間がかかるので、省略すべき作業を生成AIが判断してくれます。繁忙期などで整備士が足りない場合は資格を持たない従業員が支援するので、省略すべき作業の判断ができません。そこで生成AIの知識と判断を活用しています。
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