AIがついたうそも、創作のヒントになるのではないか──生成AI活用に対して、博報堂DYホールディングスでAI領域を率いる森正弥さんはそんな見立てを明かす。同社は2月、AIによって人間の能力を向上させていくことを目的とする研究機関「Human-Centered AI Institute」を設立した。
同社はこの研究機関を中心に、広告制作やマーケティング戦略へAI導入を進めている。その根底にあるのは「生成AIは人間の創作活動を進化させるのではないか」という考えだと森さんは語る。
人間とAIはどのような関係を結ぶのが望ましいのか。人の創造力が本当に発揮される領域とは何か。そんな疑問を森さんが解説していく。以下から森さんの文章。
近年、生成AIを含むAI技術の進化には目覚ましいものがあり、もはやAIは一部の企業のみが利用する技術ではなく、産業全体、社会一般にも広く浸透しつつあります。AI活用を始める業界は増えており、製造や金融、医療など多岐にわたっています。
博報堂DYグループでも、広告クリエイティブの制作やマーケティング戦略の立案など、多様な業務においてAIを用いています。
例えば、博報堂は、Hondaの体験型キャンペーン「Honda DREAM Loop AI」で生成AIを活用したクリエイティブ生成を行っています。これは、来場者が自分の夢の車をプロンプトで入力すると、それに基づいた設計図が生成され、カードや画像データとして持ち帰ることができるというもの。AIが企業と生活者を結び付けて、新しい形のクリエイティブ体験を提供する事例となっています。
企業でのAI活用は、業務効率化やコスト削減、顧客満足度向上などの効果が得られるのと同時に、創造性を必要とする領域においても大きな変革をもたらす可能性があります。単に人間の作業を自動化するのではなく、人間の能力を増幅し、クリエイティビティを加速させる可能性です。
AIの役割は大きく2つに分けられると考えています。1つは「人の作業を代替・効率化するツールとしての役割」。AIは、人間が行う単純作業や反復作業を引き受け、膨大なデータの分析や処理を高速に実行します。そしてもう1つは「人の創造性を高める役割」です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.