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【後編】孫正義×サム・アルトマンのAI対談、全編文字起こし 「AIは人を幸せにする。賭けてもいい」(2/3 ページ)

» 2025年02月10日 13時46分 公開
[松浦立樹ITmedia]

 99%の善良な人がいる一方、1%でも悪意を持つ人がいるなら、99%を守るために終わりなき努力を続けなければいけません。一方、イノベーターのレベルが上がれば、善良な人たちはより良い解決策を探し続ける事が出来ます。

 例えば、自動車がある限り、交通事故は起こり得ます。それを防ぐために、規則やマナー、モラルを作ります。つまり、私たちは習慣から学ぶのです。健全な規則は常に必要ですが、多くの規則は必要ありません。イノベーションには機会が必要です。

サム 全くその通りだと思います。

 サムが「業界には規制が必要だ」と言うと、みんな驚きますよね。あなたがそんなことを言うのねと。

サム 重要な産業には常に規制が課せられるものだと考えています。それが正しい状態だと思います。過剰な規則やイノベーションのスピードを損なうような規則は良くないと思いますが、妥当で健全な規制であれば必要です。どのような形であれば正しく運用できるのか、話し合うべきだと思います。

未来人から見る現代の仕事は「なんてバカげているんだ」

 医療についてお聞きします。AGI(汎用人工知能)は、医療問題をどのように解決していくと思いますか?

サム 医療は、私がとても期待している分野の一つです。地球上の全ての人々に素晴らしいレベルのヘルスケアを提供し、多くに病気を治療できるというアイデアに、私は最もわくわくしています。もしかしたら、いつか全ての病気を治せるようになるかもしれません。これは実現可能なことであり、AIがもたらす最大の勝利の一つだと思います。

医療×AIは期待の分野だとサム・アルトマンCEO

 素晴らしいですね。私は1年前に父親をがんで亡くしました。本当に悲しかったです。「どうしてこの問題が解決できないのか?」と思いました。AIが人間をがんから守ってくれれば、このような寂しさや悲しさを和らげることができ、人類に貢献するはずです。

 話は変わりますが、サムはロボットが好きですよね。

サム はい、皆さんそうだと思います。私もずっとロボットが欲しかったのですが、ずっと難しいと感じていました。AIは、身体に当たる部分を作れるようになってきていますが、脳は本当に難しいし、到達も難しいです。とはいえ、あと数年で本当に素晴らしいヒューマノイドロボットや、他の多くの種類のロボットもできると思います。それらのロボットによって世界は変わるでしょう。

 ええ。私たち人間は危険な仕事をしなくて済むようになります。タイル張りや重労働、汗をかく仕事、退屈な仕事なども。そうなれば人々は言うでしょうね。「では人間に残された仕事は何なのか?」と。それについてはどう思いますか?

サム 私たちは常に新しい仕事を見つけます。今この空間にある仕事について考えてみてください。もしあなたが1000年前の人だったとしたら、その人は私たちがやっていることを見て「それは仕事ではない」と言うでしょう。彼らからすれば、(現代人の仕事は)生き残るためにしていることではなく、忙しすぎるし、重要とも思えないからです。

 未来人からすると、今のわれわれの仕事も同じだと思います。AIが今日起こった多くのことを全て処理してくれるので、未来の人々はもっと面白いことをしているでしょう。それを見た私たちはこう言うでしょう。「なんてバカげているんだ」と。

 全くその通りですね。教育についてはどうでしょうか?  ChatGPTが出始めたころは、いろいろな学校で使用を禁止する、なんてこともあったと思います。これについてはどう思いましたか?

サム 学生はAIで論文を書けるようになる、子どもが勉強をしなくなる、という理由がささやかれていました。しかし、すぐにChatGPTを禁止にしたのは大きな間違いだったと思います。私たちは、学生はAIを使う方法を学ばなければいけないと考えています。カリキュラム自体を考え直すべきでしょう。

 ええ、その通りです。私も毎日GPTを使っています。子どもたちは勉強しなくなるのではなく、もっと学ぶことができるようになると思います。

“AIが感情を持つ”のは良いこと? 「AIは人間を攻撃しない」

 感情に関する話題もありました。AGIやASIは感情を持ち始めると思いますか?

サム まだ結論は出ませんが、それに近いものは持つのではないかと思います。

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