ソフトバンクグループは2月3日、米OpenAIと米Arm、ソフトバンクと共同発表会を開催し、企業向けAI「Cristal intelligence」やOpenAIとの合弁会社「SB OpenAI Japan」の設立などを発表した。そこで行われた、ソフトバンクグループの孫正義代表取締役と、米OpenAIのサム・アルトマンCEOとの約50分のAI対談の内容を、通訳を基に全編を通して文章化。その全貌をお届けする。
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孫 2025年はAIエージェントの年になるとのことですが、次の1年は「イノベーター」の年になると考えていますよね。イノベーターについて、説明してもらえますか?
サム 現在、当社のAIシステムは既存の情報をまとめることに非常に優れており、過去に行われたことと類似したいことをするのにも有効です。しかし、まだ新しい科学的な発見はできていません。これを実現できるのが次のレベル、イノベーターです。これは社会に変革をもたらすものだと考えています。25年はAIエージェントに取り組んだ後、26年はイノベーターの開発に取り組むつもりです。
孫 人によっては「AIには限界がある」という意見を持つ人もいます。人間が教える以上、人間より賢くなることなんてあるのか。そこが限界じゃないかと。しかし、イノベーターは革新的なことを生み出しいていくということですよね。そのメカニズムなど、もう少し補足して教えてもらえますか?
サム 人間のメカニズムに近いものになると思っています。例えば、人間が問題の解決を図るとき、まずはいろいろなアイデアを思い浮かべますよね。自分の知識と結び付けて、あれこれアイデアを考えます。人間の創造性というのは、このプロセスを得ていると思っています。
つまり、既存の知識を何度も細かく見方を変えて、より良さそうなものに変えていく。この過程がAIでもできるようになると考えます。
孫 論理的な思考は最初のステップですよね。1から10、10から100へと段階を経て論理的に考える。人間はそうやって試行錯誤しながら革新的なアイデアを生み出します。サムの言うように、私たちはさまざまな角度からいろいろなことを試しますが、その探求こそが(イノベーターの)コンセプトであると。
私は2024年の間、1008件の特許を申請しました。私の頭の中では、本当に多くのアイデアを探求しており、私は右脳に異なる考え方を強いています。それこそがイノベーションの鍵でした。AIエージェントには、異なる試みを強いることができますよね。それがイノベーターにとっても重要なことだと思います。何十億、何百億とトライ&エラーをし、正解にたどり着く。これこそがイノベーションですよね?
サム はい、そうです。
孫 よく分かりました。そうではないかと思っていたのです。何を準備しているのか分かったがします。とても良いと思います。あまり多くを語らない方がいいですね。
サム 多くのエージェントや多くのイノベーターと一緒に働く場合を考えてみてください。それらがお互いに話し合い、お互いのアイデアを基に仕事をし、さまざまな専門知識を統合していく。それはとてもパワフルだと思います。
孫 企業向けAI「Cristal」では、ソフトバンクの中でも数十億というエージェントを作ろうと考えています。なぜなら、当社では1億件分以上の顧客のアカウントを持っているからです。携帯電話で4000万人、PayPayで7000万人以上います。それぞれに複数の機能があるので、各機能で行う単純作業にはAIエージェントを割り当てることができるはずです。
エージェントはたくさんいても、キャパシティーとしては問題ないと考えています。単純なタスクを統合するだけですから。コンピュータが得意なことです。
サム 学習するべきことはたくさんあると思いますが、その方向性には同意します。
孫 ソフトバンクでの社内活用で、Cristalの活用事例ができたらそれを社外でも広めていきたいと思っています。
サム そうですね。その方向で一緒に進めていきましょう。
孫 残り時間も少なくなってきましたが、サイバーセキュリティについてはどう考えていますか? 常に悪用しようとする人が存在しますよね。AIをサイバー攻撃に利用するような動きも出てくると思いますが、いかがですか。
サム 素晴らしい指摘だと思います。サイバー攻撃は、防御する方が難しいので、この問題について真剣かつ迅速に向き合わなければいけないと思っています。
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