AIの社会実装、日本はなぜ遅れる？ 原因は“下請けへの伝言ゲーム”か PKSHA代表が解説（2/3 ページ）

[松浦立樹，ITmedia]

ブロックの組み合わせで、高速開発を実現

　また日本のビジネス構造の2つ目の問題点として「インセンティブの構造矛盾」も挙げている。建造物的なソフトウェア開発の価格は“どのくらいの人数がどのくらいの時間をかけるか”で計算しており、これが適正だと上野山代表は話す。一方で、関わる人数が増えるほど売り上げが上がり、優秀なエンジニアが1人で頑張って作ると売り上げが激減する、という構造でもあると指摘する。

インセンティブの構造矛盾

　現在のソフトウェア開発では、AIによる少人数での開発が可能となっている。しかし、これでは先の構造が悪さをし、売り上げが下がる現象が発生する。上野山代表は「これはどの企業が悪いというわけではなく、作り方の構造によってデジタル活用が進まない状況を生み出している」と話す。

　これに対して、PKSHA Technologyでは、SaaSビジネスによくあるライセンス型のビジネスモデルに切り替えることで対応している。具体的には「早くローンチすると売り上げが上がる」「関わる人数を絞ることで効率が上がる」という仕組みを構築。顧客の成功と自社の成長を同じ方向にして、インセンティブを得られる構造を採用しているという。

「早くローンチすると売り上げが上がる」「関わる人数を絞ることで効率が上がる」という仕組みに

　「なぜ少人数で作れるのか？　という部分は、ブロックを組み合わせることによる高速開発で実現している。例えば、音声認識やチャットbotなど、顧客に提供できるさまざまなソフトウェアを用意する。それらをブロックのように組み合わせることで、クライアントの望むソフトウェアを素早く構築し、用意できる環境を作っている」（上野山代表）

“ブロックの組み合わせ”による高速開発を実現

　このようなセミカスタマイズモデルであれば、多層伝言ゲーム型とも、パッケージ型のSaaSモデルとも違う、すぐに使えて作りこみも可能なビジネスモデルを実現できると上野山代表。PKSHA Technologyはこのような形で、自社のAI事業を成長させているという。