米Microsoftは3月27日(日本時間)、AIに関するイベント「Microsoft AI Tour Tokyo」を東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催した。基調講演では、サティア・ナデラCEOが登壇。MicrosoftのAIサービスについて、日本での導入事例を交えながら語った。
ナデラCEOは冒頭、「日本はMicrosoftが米国外に初めて進出した国」として、日本とは47年の付き合いがあると親密さをアピール。その上で、近年のAI技術の加速的な進歩を振り返り、現在同社が注力しているサービスの1つとして、AIアシスタント「Microsoft Copilot」を挙げた。
Microsoft Copilotは「Word」「Excel」「PowerPoint」などと連携できることが特徴。Copilot(副操縦士)という名前の通り、生成AIによって人の作業をサポートし、効率化を図れる。
Microsoft Copilotについて、ナデラCEOは「AIのためのUI」と説明する。Copilotを既存のアプリやブラウザなどに組み込み、ユーザーの日常的な利用を促進したいとの考えを示した。
一方Copilotは同社が提供するツールと連携し、仕事にも活用できる。企業向けには、MicrosoftのツールおよびCopilotと、社内データや業務の成果物などを統合的に提供するサービスを展開。Microsoftでも導入しており、営業1人あたりの売り上げが10%増加するなどの成果が出ているという。
ナデラCEOによると、企業向けのCopilotサービスは日本でも採用が急増。「日経225(を構成する企業)の85%の企業が『Microsoft 365 Copilot』を利用している」と語る。例えば、住友商事はMicrosoft 365 Copilotを全社で導入し、業務効率化などにより年間12億円のコストを削減したという。
またナデラCEOは、Microsoftが日本で提供するAI開発基盤について言及。日本国内のデータセンターの拡張計画を明かした。日本には東西2つの拠点があるが、どちらにも米NVIDIAのGPUなどを導入し、4月中旬からより高度な計算資源を利用できるようにする予定だ。
加えて、Microsoft傘下が運営する「GitHub」についても触れた。現在日本には355万人のGitHubユーザーがおり、前年比で23%増加したと説明。GitHub上のCopilotのアップデートで、2月に公開した自律型のコーディングエージェント「Project Padawan」に対して「非常に期待している」とコメントした。「私たちの目標は開発者であることの意味を拡大し続けることだ」(ナデラCEO)
こうしたプラットフォームを活用したAI開発の一例として、ナデラCEOは日本航空の事例を紹介した。日本航空はMicrosoftの小規模言語モデル(SLM)を活用し、オフライン環境でも動作するAIツール「JAL-AI Report」を開発。急病人が出た際などの報告書作成に利用し、作業時間を最大3分の1に短縮したという。
「過去47年間、私たちは日本にテクノロジープラットフォームを提供し、日本のイノベーションの隆盛を見てきた」「(今後も)より多くの成果をともに達成できることを期待する」(ナデラCEO)
「Microsoft 365 Copilot」に推論エージェント「Researcher」と「Analyst」
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