AIスタートアップのSpiralAI(東京都千代田区)は4月17日、AIキャラクターと会話できるスマートフォンアプリ「HAPPY RAT」をリリースした。サービス開始にあわせ、声優の梶裕貴さんとのコラボレーションを実施。梶さんはリリースイベントに登壇し、AI活用への思いを語った。
HAPPY RATは、10種類のオリジナルAIキャラクターたちと会話ができるスマートフォン向けアプリ。同社が開発したLLM「Geppetto」を搭載し、各キャラクターの性格に基づき、共感やリアクション、入力と関係のない話題などを交えた返答ができるという。アプリでは、各キャラクターと特定の場面で会話できる「イマーシブドラマ」を選び、その場面に応じたやりとりをして遊べる。
やりとりは音声とテキストに対応する。音声を入力する際は、アプリの操作画面下部にあるボタンを押し、キャラクターに話しかける仕組みだ。Geppettoはテキストのみのサポートのため、アプリでは同社が独自に開発した、音声認識モデルと音声合成モデルを活用し、音声でのコミュニケーションを可能にしたという。
なおこれらのモデルを含め、HAPPY RATは権利的上問題のないデータのみで学習したAIを活用しているという。
今回のコラボでは、梶さんがプロデュースと、元となる声を担当する公式AI音声合成ソフト「梵そよぎ」(そよぎそよぎ)をベースにしたネズミ型のキャラクターがアプリ内に登場。梶さんの声を基にしたAI音声で、ユーザーや他のAIキャラクターと会話する。
なぜ、今回のコラボに至ったのか。梶さんは梵そよぎを手掛ける一方、生成AIを使い、無断で作成した音声・映像に対するルール作りを訴える声優の団体「『NOMORE無断生成AI』声優有志の会」にも参加している。イベントでは、AIとクリエイティブを取り巻く現状を踏まえながら、以下のように語った。
「声の権利問題もそうだし、声だけではなく、イラストやテキストも線引きがすごく難しく、何が良くて何が悪いか、現状では誰にも決められない状況がある。僕もエンタメに関わらせていただいている人間として、クリーンなものを目指したいという思いがあった」(梶さん)
そのうえで、コラボについて「技術的には、LLMの規模として、より多くのものを学習した方が、再現度が高いというか、いわゆるクオリティーの高い会話表現が可能になると思うが、そこを自分たちが許される範囲、誰も傷つけない、誰にも嫌な思いをさせない範囲で、ゆっくりじっくり作っていくところが、今回の取り組みのポイント」と説明。こうした取り組みをエンターテインメントとして発信していき、「多くの声優、イラストレーターさんたちにも、こういうAIとの向き合い方があるんだよ、という1つの発見につながっていけばうれしい」(梶さん)
イベントでは、梶さんがHAPPY RATのキャラクターたちと会話を実演する一幕も見られた。
HAPPY RATは、リリース時点で99言語の入力に対応。出力言語は日本語のみだが、字幕を英語に設定できる。2025年の夏ごろまでに英語での音声出力機能も追加予定。
【修正履歴:2025年4月18日午後6時】記事掲載当初「99カ国語の入力に対応」と記載しておりましたが、プレスリリースの訂正に伴い、「99言語の入力に対応」に修正しました。
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