マスクド・アナライズの「AIしてま~す!」
オルツの不正はなぜ起きた? 報告書・元社長の経歴を分析 「AI新興企業は“捕まっていない詐欺師”」と言わせないために(1/5 ページ)
5月27日、私はITmedia AI+でオルツにおける売上不正“疑惑”に関する記事を書きました。その後7月28日には、第三者委員会から調査報告書が発表され、売上高の最大9割を不正計上していたと判明。オルツにおける売上不正が「疑惑」から「確定」に変わりました。
公開された調査報告書をAIによる要約や質問をせずに、全127ページを1ページずつメモを取りながら読み込んだところ、想像以上にがくぜんとしました。この記事ではオルツにおける設立から民事再生までの実績を掘り下げて、不正が見落とされた背景を探ります。
調査報告書による売上不正の経緯
最初に今回不正行為が発覚した、売上高の最大9割に及ぶ119億円の不正計上について時系列を追って解説します。2019年、社長であった米倉千貴氏は展示会における反響から、AIによる議事録作成に魅力があると感じており、開発を進めました。
この頃、業務委託先とのやりとりから、後に「サブスク2.0」と命名した循環取引という古典的な手法(※複数社が共謀して商品の売買や業務の提供を繰り返し、取引が存在するように偽装して売上や利益を水増しする行為)を考案します。20年には、自社開発の議事録ソフト「AI GIJIROKU」を販売するものの、売上が計画を下回り、預金残高が1000万円を切る切迫した状況に。さらに当時はコロナ禍における非常時でもありました。
そこで売上目標の10億円を達成するために、広告会社と循環取引を始めます。当時の監査法人(報告書内ではAWと表記)は不備を指摘したものの改善されず、監査を降りてしまいます。その後、監査法人のシドーと新たに契約して、投資家や証券会社や証券取引所には虚偽報告を提出し、株式上場となりました。
前回の記事でフラグ(問題を起こす予兆)として指摘した「広告費が多すぎる」「研究開発費が計上されているが成果がない」「広告代理店が議事録ソフトを32億円も販売するのは不自然」「定期的に契約数が〇〇社を突破するのは怪しい」点がありました。結果としてこれらは不正行為であり、売上高119億円と広告宣伝費115億円は虚偽報告でした。
また、有料アカウント数は表向きが2万8699件でしたが、実体は5170件、直近の利用があったのは2236件でした。研究開発費においても、デジタルツインエンジン構築(現実の環境を仮想空間で再現する技術)とブロックチェーン管理が循環取引のため業務を行った実体がなく、架空のものでした。
他にも、AI GIJIROKU以外の取引や日本国外でも循環取引が行われていた他、個人の業務委託者に対しても売上や費用を過大に計上しています。前回の記事で指摘したフラグ以外にも、それ以上の不正行為が発覚した次第です。
不正行為の首謀者・オルツ元社長はどのような人物だったか
スタートアップの社長が表に出てメディア露出をしたり、投資家にプレゼンを行って資金調達したりすること自体はよくある光景です。一方、今回の不正行為では、その社長が首謀者でもあります。そこでオルツの社長だった米倉氏について、その経歴を調べてみました。
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