半年前に名刺交換をした人に「お久しぶりです!」と声をかけられ、「やば、誰だっけ」とうろたえていたら、AIがイヤフォン越しに耳打ちしてくれる──JVCケンウッドが開発している、こんな製品が話題だ。10月14日開催の技術展示会「CEATEC 2025」(幕張メッセ)では、同社がイヤフォンのプロトタイプやデモを展示。現地には報道陣が絶えず詰めかけていた。
すでに製品について報じるニュースも多いので、記者もデモを体験。AIイヤフォンに助けてみてもらおうとしたが……意外にも記者の「もみあげ」がそれを許してくれなかった。
今回JVCが展示しているシステムは、AIイヤフォンが搭載するカメラで相手の顔を撮影。無線接続したスマートフォンからクラウド経由で大規模言語モデルによる照合を実施し、イヤフォンに音声で情報を返す──という仕組み。イヤフォンはワイヤレス型で、耳の穴に差し込んで固定するタイプではなく、フックを耳に引っ掛けるタイプだ。
ブースのデモでは、モニターに映し出される人物の顔を撮影し、その人の名前をAIに耳打ちしてもらえる。ただしイヤフォンとシステムはそれぞれ開発中のため、本来イヤフォンから聞こえる音声はスピーカーで再生する。
記者も実際に体験。イヤフォンを耳にかけ、カメラのある部分を正面に向け、準備万端……と思ったのだが、なんとカメラにはモニター(相手の顔)ではなく、ごみのようなものが映っていた。
そう、なんとイヤフォンと記者の髪形の相性が悪く、もみあげが撮影を邪魔してしまっていたのだ。ただ、記者は別にもさもさの長髪というわけではない。すっきりした短髪でもないが、常識的な範ちゅうの毛量だ。もちろん異常にもみあげが長いわけでもない。
仕方がないのでヘアピンでもみあげを留めてトライしたが、それでもカメラに髪の毛が映ってしまう。何度かやり直してもうまくいかないので、仕方なくイヤフォンを耳のそばで持って体験した。
撮影さえできれば動作が良好で、多少見切れていても相手の名前を耳打ちしてくれた。ただしテンポは若干悪く、今のまま使うと相手の前で7〜8秒くらいうろたえることになりそうだった。
JVCによれば、AIイヤフォンは同社の音響・映像技術とAIを組み合わせた製品として企画。これから実証実験を進め、26年度中の法人向け提供を見込む。同社は基本的にイヤフォン本体とソフトウェア開発キットを提供し、イヤフォンを使ったシステムの開発・提供、LLMの選定などはパートナーシップを結ぶ企業やユーザー企業に任せる考えだ。
つまり今回展示していたシステムはあくまでイヤフォンの使い道を示すデモ。今後システム開発まで行う可能性はゼロではないものの、現状JVCが同様のシステムを提供する予定はないという。ただ、記者が遭遇した髪の毛の問題は、ハードウェアが抱える問題の一つとして認識しており、今後対応していく予定だ。
同社は今回展示したような用途以外にも、カスタマーハラスメント対策での活用なども見込む他、個人向けの提供も検討する方針だ。
先端テクノロジーを誇る有力ベンダーと最新トレンドを探るユーザー企業が一堂に会するマッチングイベント「ITmedia Apex Innovations 2025 秋」。有識者が「AIエージェント」「次世代ロボティクス」「量子コンピュータ」の実践的な知見を語ります。
スマホの次は“身に着けるAI”の時代到来か 「ウェアラブルAI」続々登場 企業はどう向き合う?
シャープ初、同社の生成AIチャットと連携する新型ドラム式洗濯乾燥機 洗濯物の種類に応じた“専用コース”提案も
AIは「大きい」より「小さい」方がいい──AIエージェントの開発手法、米NVIDIAが主張 LLMをSLMに移行する技術も掲載
人事評価・採用で“AIの活用度”考慮へ 語学のアプリのDuolingo AIで代替できる外部委託も順次廃止
“AI面接官”と面接練習できるサービス、無料提供開始 希望職種やESもとに質問→ユーザーの回答を評価Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.