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「CT」と「MRI」の違いって何?科学なニュースとニュースの科学

» 2009年04月03日 18時07分 公開
[堺三保,ITmedia]

 前回、いわゆるCTとMRIって、ちょっと違うものだった話をしたけど、覚えてますか? 今回はそこんところをもうちょっと説明してみよう。

 CTっていうのはコンピューテッド・トモグラフィ(Computed Tomography)、つまりコンピュータ断層撮影の略称で、広い意味で使う場合はMRIはもちろん、コンピュータを使って物体を破壊することなくその断面像を撮影するあらゆる手法を指す。

 でも、一般にCTって言う場合は、X線を使ったX線CTのことを指す場合が多い。

 ざっくりとおおざっぱなことを言っちゃうと、実のところX線CTの基本はレントゲン写真と同じだ。レントゲンというのは、X線を身体に照射して、透過したX線の量の違いから、内部の画像を作り出す。

 ただし、CTの場合は、検査機を身体の周りを一周させて、X線をいろんな方向から照射してる。で、その結果をコンピュータで処理して、立体的な映像を再構成しているのだ。

photo サルの脳のMRI画像。産総研による脳研究成果発表のニュースリリースより

 一方、MRIはマグネティック・レゾナンス・イメージ(Magnatic Resonance Image)、訳すと磁気共鳴画像の略称だ。

 これは、その名の通り、磁場内における核磁気共鳴現象を利用して断面画像を得る方法で、X線CTとはまったく違う。

 これまたものすごく単純化して書いちゃうと、人間の身体を構成してる物質の大部分には水素の原子核が含まれてるんだけど、一定の強さの磁場の中に人体を置くと、この原子核が小さな電磁石みたいになって、同じ方向にスピンするようになる。磁場をなくすと、また元の状態(つまりバラバラな方向にスピンする)になるんだけど、ところが、人体の組織ごとに、元の状態に復帰するまでの時間が違うんだそうな。

 MRIは人体に磁場を加えてから、水素の原子核の状態が元の状態に戻るまでの時間を測定して、その差をコンピュータで立体映像にしているのだ。そうすると、不思議なことに内蔵とか血管とかの映像ができあがるんだって。

 MRIがX線CTより良いのは、放射線を浴びる必要がないこと、骨は写らないんでより詳しく内臓の状態がわかること等々いろいろあるんだけど、磁気を使うんで、身体に金属を埋め込んでたりする場合は使えないとか、逆に骨の病気を診るには不向きとかってことで、一長一短があるのだった。

 まあ、どっちにしても、基本的に身体にメスを入れることなく、身体の中を診ることができる検査なんで、今、ものすごく重宝されてるのだ。

 広義のCTには他にもPET(ポジトロン断層法)とか SPECT(単一光子放射断層撮影なんてのもあって、今もどんどん改良が進んでるんだとか。

 どうですか、あなたも1回、撮ってもらってみては?

堺三保氏のプロフィール

作家/脚本家/翻訳家/批評家。

1963年、大阪生。関西大学大学院工学研究科電子工学専攻博士課程前期修了(工学修士)。NTTデータ通信に勤務中の1990年頃より執筆活動を始め、94年に文筆専業となる。得意なフィールドはSF、ミステリ等。アメリカのテレビドラマとコミックスについては特に詳しい。SF設定及びシナリオライターとして参加したテレビアニメ作品多数。最近の仕事では、『ダイ・ハード4.0』(翻訳:扶桑社)がある。2007年1月より、USCこと南カリフォルニア大学大学院映画学部のfilm productionコースに留学中。目標は日米両国で仕事ができる映像演出家。

ブログは堺三保の「人生は四十一から」


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