昔からよく言われている格言の1つに「上げ潮はすべての船を持ち上げる(景気が上向けば、皆がその恩恵を受ける)」というのがあるが、Appleが再び、この「上げ潮」役を果たしたようだ。
先日Wall Street Journalに掲載されたある興味深い記事によると、AppleがiPhoneやiPod touch、iPad向けにスタートさせたアプリ内広告プラットフォーム「iAd」は、フルブラウザを搭載する携帯電話など各種のモバイル端末に対する広告主の関心を大いにかき立てているという。
記事によれば、モバイル広告事業者は当初、Appleが自社端末上での広告料100万ドルのキャンペーンを展開するといった大きな動きに出ることで、既に競争の激しいこの業界の微妙なバランスに混乱をもたらす可能性を懸念していたという。広告料100万ドルというのは、スタート時の価格としては法外な高さだ。
だがそうした懸念は杞憂に終わった。広告会社SproutのCEO、カーネット・ウィリアムズ氏に言わせれば、Appleは「モバイル広告に人目を引く魅力を付加した」という。実際、Appleが7月1日にiAdを始動させて以来、出版社や代理店からSproutに寄せられる問い合わせの電話は4倍に増えたという。
なぜこうした現象が起きているのか? 広告大手Publicis Groupeでモバイル担当主任を務めるアレクサンドル・マルス氏によると、多数の人気商品を持つAppleの名声がこの市場全体の正当化に貢献したのだという。
Googleもただ指をくわえて見ているわけではない。モバイル広告により、同社の年間の売上高は10億ドル押し上げられているという。ところでGoogleはこれまで広告の世界で常に大きな影響力を発揮してきたが、モバイル広告での成功は比較的新しい。そこで次のような疑問が浮上する。「果たしてAppleの存在はGoogleにとってもプラスに影響しているのだろうか?」
プラスに影響しているのは確かだ。ただし、その影響を数量化することはできない。それは、GoogleがAppleのiAdやこの市場のそのほかの業者に及ぼしてる影響を数量化できないのと同様だ。
Googleにとってさらにもう1つプラスに作用したのは、Appleを出し抜いてAdMobを買収し、iPhoneとAndroid端末の両方にインタラクティブな広告を提供できるようにしたことだ。
両者には大きな差別化要因がある。それは、AppleのiAdがApple製品にしか対応しないのに対し、GoogleのAdMobとAdSense for MobileはApple製品のほかAndroid携帯やAndroidタブレットでも動作するという点だ。
その莫大な量だけからしても、Googleは向こう1年間は確実に市場を支配できるはずだ。
ただしiAdのような現象は今に始まったことではない。Appleはその明るく輝かしいブランドの力によって、これまでにも各種の新しいテクノロジーと消費者の間をつなぐ事実上のゲートウェイとなってきた。
タブレット端末にしてもそうだ。タブレット端末は当初、iPadが3月に登場するまでは、不細工なコンピュータとして広く一般に認識されていた。
それが今では、Samsung、Lenovo、Dellなど、Androidを採用する多数のベンダーで、タッチスクリーン端末の製造が追いつかない状態になっている。
目下、タブレット端末の分野ではコンピュータメーカー各社がAppleの後を追い、モバイル広告の分野ではAppleがほかの企業の後を追っている。どちらがどちらを追っているかは果たして重要だろうか?
答えはノーだ。何しろ、モバイル広告にせよ、タブレット端末にせよ、どちらもまさに種まきの準備が万端に整ったばかりの新しい分野なのだから。
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