第4回 部下こそ上司に「リーダーシップ」をとれ目的を達成する説得法(2/2 ページ)

» 2008年07月04日 20時40分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]
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ステップ5:順序だてて思いを伝える

 ステップ5で、実際に会社や上司に伝えます。その際、伝える順番が非常に重要です。

  1. 上司(会社)がやりたいことと、その理由を言う
  2. 自分がやりたいことと、その理由を言う。その際、Yes,andでつなげる
  3. 両方を満たすために、共有ゾーンと、その理由を言う

 決して、自分の思いから伝えないでください。自分のやりたいことを最初に言い出すと、相手が斜に構えたり、ムッとしたりします。そうすると、こちらもついムキになって話してしまうんですね。そうすると相手の立場に立たずに終わってしまいます。必ず、上司、もしくは会社のやりたいことと、その理由から伝えていきましょう。

 「部長は10年間、この会社がまだ小さかったことから、やってこられましたね。きっと大変な思いでやってこられたことだろうと思います。以前、○○だから、△△△をしたいとおっしゃっていましたね。僕も、少しでもお役に立ちたいと思っています」(上司がやりたいことと、その理由)

 この後、andで話をつなぎます。butでつないではいけません。ここで、「だけど、もう時代が違うんですよ」と続けては、「あれだけ気持ちをくんでくれたと思ってたのに、自分が言いたいことを言うためじゃないか」と思われてしまいます。

 「そして(and)、部長に△△△をしたいという思いがあるように、僕にもこんな思いがあるんです」

 こう言ったら、大抵の人は「そうか、キミにもそんな思いがあるんだ」となります。ここでは情熱とロジックの両方が必要なので、「とにかくスマイルなんですよ!」ではダメです。

「以前いた会社は笑顔であふれていたから、こんなふうになりました」もしくは「笑顔が全くなかったから、こんな辛い思いをしました」

 こんなふうに、自分なりの理由を付けてください。そして、相手の思いと自分の思いの両方を満たす提案をします。ステップ4で考えたことを、なるべくたくさん提示しましょう。経験のある上司だったら、有効なものとそうでないものを判断できますし、その中で1つでもヒットするものがあれば、「じゃあ、やってみようか」ということになります。

ステップ6:成功経験を思い出して伝える

 言うべきことがしっかり組み込めたら、できるだけ情熱を込めて伝えましょう。上司の思いをくんでいるわけですから、ここでは思い切りやって構いません。その際、過去の成功体験を思い出してみてください。例えばデートに誘ってOKをもらった時でもいいですし、何かを発表して絶賛された時でも、部活で優勝した時でもいいですから、自分が成功した時の体験を思い出して、そして伝えてみてください。

 伝えるには、対面でもできますが、メールでもいいのです。上司(会社)がやりたいことと、その理由で1段落。自分がやりたいことと、その理由で1段落。両方を満たす共有ゾーンと、その理由で1段落、という構成にします。情熱を込めて書けば、きっと理解してもらえます。

真の自立とは、相手と共有できること

 自分のやりたいことを主張する社員は、会社を良くしようと思って言っているのであって、悪くしようと思ってやっているわけじゃない。でも、自分の思いだけを通そうとしたら、上司(会社)はそんなに革新的ではないので、受け入れることができません。

 しかし、会社がやりたいことをちゃんと理解しつつ、自分のやりたいことをはっきり言う自立的な社員を、頭ごなしに否定する会社は、正直ヤバイです。もちろん、昔から変わらない伝統的な会社もあります。でも、この手順で伝えて意見が通らなかったら、その会社の先行きは怪しいと思いますね。

 自立とは、自分の思いばかりをバンバン通すことではありません。相手の思いをくみつつ、自分の思いや希望も織り成して、共有ゾーンを見つけていける。私は、こういう人こそ自立的な社員だと思います。

部下こそ上司に「リーダーシップ」を

 ある人は、権限のある人に影響を及ぼすことを「リーダーシップ」、そして、権限のない人に影響を及ぼすことに「マネジメント」といっています。一般的に言われている「リーダーシップ」と「マネジメント」とは逆ですよね。

 一般的には、部下から上司にこんな提案をすべきじゃないとか、ここまで大きい話を部下がすべきではないという風潮がありますね。確かに、マネジメントの範囲では考えられません。しかし、部下が上司に対してリーダーシップを発揮することは可能です。

 むしろ、そうしていかない会社はまずいと思います。部下であるみなさんは、ぜひともリーダーシップを発揮して、上司や社長、会社を動かすくらいになってほしいと思います。

自分も相手も気持ちよく

 以上、目的を達成するための説得の手順を紹介してきたわけですが、実はこれはマッチング&リーディングをしているのです。自分の思いを伝えるのはリーディング、相手の立場に立つのがマッチングです。必ずマッチング&リーディングでなくてはなりません。リーディングだけだと反発されますし、マッチングだけでは、いつまでたっても自分の意見は通りません。

 自分を押し殺して相手に協力するという固定観念がありますが、マッチング&リーディングなら、自分のやりたいこともできます。もちろんすべてできるわけではありませんが、自分らしさは出せるし、そうすることで相手に気持ちよく協力できます。1人1人がみんな自分らしく、しかもお互い協力し合える。私はそれが可能だと思っています。

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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本相武(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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