いつも飲み会を断る職場仲間、どう付き合う?「アドラー心理学」的処世術(3/3 ページ)

» 2008年08月06日 12時59分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]
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人を驚かすのが生きがいの問題児、人を最も驚かせた意外な行動とは……

 ミルトン・エリクソンという有名な催眠療法家の話も紹介しましょう。ある男の子は腕白坊主で、何かを壊したり、喧嘩をしたり、盗んだりして暴れまわり、学校中を大騒ぎにします。その子は、実は人をびっくりさせるのが好きなんです。そして、びっくりさせ続けたいと思っていました。

 その子がエリクソンのところに来た時に、エリクソンは「キミは、たぶん学校中、親も一番びっくりする方法を知っているよね。それをやると、これ以上びっくりすることはないっていうことがあるんじゃない? それをやって、みんなをびっくりさせたら?」と提案しました。

 何をしたと思いますか? 次の日の学校では、その男の子がきちんと授業に出て、何も壊さず、隣の子とも仲良くしていました。みんなは「あの子が!」と、本当にびっくりしたというわけです。

 最終的な解決にはならないかもしれないけれど、これも現象学的なアプローチですね。「びっくりさせたい」という価値観をカウンセラーが見抜いて、びっくりさせる建設的なやり方を提案した例です

上司が新人時代を思い出し、部下が上司の立場に立ってみると……

 ビジネスの場面では、新人が入ってくると、とかく上司やベテランの方は「お前はあいさつもできないのか」とか「こんなレポートも満足に仕上げられないのか」と、言ってしまいがちです。

 でも、ちょっと自分がそのころのこと、まだ新人だったころのことを思い出してください。あいさつはちゃんとできていたか、レポートはちゃんと書けていたか、これもやらなきゃ、あれもやらなきゃで、いっぱいいっぱいだったなあ、と思い出してほしい。相手の立場に立ってみると、分かることがありますね。

 逆に部下も、上司に注意されて、ふくれるようでは相手の立場に立っているとは言えません。ちょっとマネージャーやプロジェクトリーダーの立場に立ってみてください。リーダーが自分の業務をやりつつ、全体の進捗状況も見ているのに気づくでしょう。たった1人の作業が済んでいないことで、ほかの人に迷惑がかかっていることが分かるかもしれません。

 自分の視点から見るのではなくて、関係各位の立場から見てみると、自分がどういう行動をするべきか見えてきます。

今よりちょっと、自分や周囲を好きになるために――アドラー心理学の存在意義

 アドラー心理学でカウンセリングする場合は、もうちょっと自分を好きになって、もうちょっと周囲の人を信頼できて、自分の居場所があって、もうちょっと自分が役に立てる感が増えるように行っています。きっとどんな人も自分で決められると信じているし、この症状にはきっと目的があるから、症状を使わずに解決する方法があると信じて、それを探そうとします。

 自分の中では矛盾しているようでも、実はそれぞれでバランスをとっていると考えるし、症状には必ず相手役がいるから、その相手役がその戦いから降りるか、さもなくば、その症状ではない方法で相手役との関係が築けるのではと考えます。しかも、人には人それぞれの体験や感じ方があり、1人として同じ人はいないという前提の下でカウンセリングします。

 私のカウンセリングもコーチングも、こういう視点でやっています。

 アドラー心理学の考え方は、20年前は非常にマイナーでしたが、今はいろんな学派がアドラーに近づいてきています。このような思想や理論を、アドラーが100年も前にすでに展開した点も、すごいことではないでしょうか。

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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本相武(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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