“せんべろ居酒屋”で紹介したシステムインテグレーターのTISの社食は、絶品ラーメンでも人気だ。思わず通ってしまうメニューを提供する理由とは?
社食特集では前回、1000円ポッキリで飲めるTISの“せんべろ居酒屋”を紹介した。この居酒屋の隣りは、実はカフェテリアだ。
朝、昼、夜とメニューを変えて1日中営業している。パブの営業中はパーティションで仕切られているが、昼時は仕切りを取り、全450席の巨大カフェテリアになるのだ。「特にラーメンがおいしい!」と人気のTISのカフェテリアの舞台裏を紹介しよう。
社名 | 創立 | 事業内容 | 従業員数 |
---|---|---|---|
TIS | 1971年4月28日 | システムインテグレーター | 2757人(2008年3月31日現在) |
「町のラーメン店よりコシがある」。カフェテリアを愛用しているTIS・総務部の福島正行さん、ITホールディングス・広報部の浄土寺仁(じょうどじ・ひとし)さんは、カフェテリアのラーメンに太鼓判を押す。
カフェテリアを委託運営している東京ケータリングの秋元文男さんにその理由を聞くと、「生めんを注文の都度、ゆでているから」という答えが返ってきた。
秋元さんが心がけていることの1つに、食事を提供する「スピーディーさ」がある。カフェテリアの席は450席で、昼時の利用者数は1日当たり1200〜1300人。ピーク時はカフェテリア外の廊下まで長蛇の列になるという大人数を、ランチの営業時間2時間半で3回転させる必要があるからだ。
ところが、あらかじめ炊いておけるご飯ものに比べ、注文の都度ゆでるラーメンは回転効率が悪いから、めんが伸びない代わりに列が伸びてしまう――という事態もあり得る。そうなると、「待たされるコーナーは敬遠して、ほかのコーナーに行く」(福島さん)人も出てくるだろう。皆、貴重な昼休みを行列に費やしたくないのだ。
かといって、作り置きした冷凍ものは生めんほどコシが出ないという。「おいしさ」もまた、心がけていることの1つだという提供側としては、味が落ちる冷凍ものはできれば使いたくない。スピーディーさかおいしさかの二者択一ではなく、スピーディーさ、おいしさとも提供したい側にとって、お昼時のラーメンは手ごわい相手なのだ。
おいしさを提供するため生めんの使用は譲れない。さらに列を止めないことを考慮すると、「待ち時間は3分まで」(秋元さん)だという。3分内にゆで、提供する、という条件から、使用する生めんの太さを決定した。ちゃんぽん用の極太めんは、どうしても3分以上のゆで時間がかかってしまうため、泣く泣く冷凍めんを使用することにしたという。
ラーメン以外にも「おいしさ」を追求しものに、そばやうどんなどのダシがある。こちらはTISからのリクエストで決まった。しょうゆベースかそうでないかなど、そば、うどんともダシは好みが分かれるもの。特にTISは、「うどんは関西風」というこだわりを持つ関西出身者が多い。そこで、そば、うどんともに、関東風か関西風かを選べるようにしたのだ。
ダシのように、「社員の方が直接リクエストを下さることから、新しいメニューができる」(秋元さん)こともしばしばあるという。例えば納豆、おくらなどを乗せた「ネバネバ丼」も、「ヘルシーなメニューが欲しい」という社員のリクエストでメニューに追加した。
また、注目度を高めるため、随時イベントも行う。例えば2006年12月には謝恩フェアとして「マグロの解体ショー」を開催した。体長155センチ、体重72キロのマグロを解体、漬け丼などマグロ尽くしのメニューを用意したという。「女性が集まる場所には男性も集まる」から、パスタの充実など今後は女性に喜ばれそうなメニューを増やしていく予定だ。
こんなふうに柔軟にメニューを変えたりイベントを開催する目的は、ズバリ「飽きずに通ってもらう」(秋元さん、福島さん)こと。運営会社がビジネスとして発言する一方、TISはあくまで福利厚生の一環として社食の活性化を意識し、コメントする。
社食が社員の胃袋を満たすだけでなく、安定した提供価格を保つことや、コミュニケーションの場として役立つことは、福利厚生の充実を意味する。引いては「働きやすい環境が整っている会社」として、より優秀な人材確保につながるからだという。
たかが味。されど味。おいしさは働きやすさに直結する。メニューはもちろん、イベントなどのリクエストがあれば「いつでも直接言ってほしい」と秋山さん。より働きやすい環境は、総務や運営会社など提供する側任せでなく、提供されるビジネスパーソン1人1人がリクエストすることでも手に入れることができそうだ。
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