「何でもできる」より「これができる」「心のスイッチ」で心の状態を変える(2/2 ページ)

» 2009年02月05日 19時20分 公開
[平本あきお(構成:房野麻子),ITmedia]
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楽しい場面を思い出す――心の状態をよくする

 最後に、心の状態をよくするミニ実習を紹介しましょう。過去の楽しかった場面を1つ思い出してください。

 仕事と関係ない遊びや旅行、趣味でもかまいません。自分が充実しているな、楽しいなという1シーンを思い出してください。まるで、映画館で高級レザーシートに座って、目の前でその場面が映し出されているように、あるいは、その映画の中にいるかのように思い浮かべてください。

 思い浮かべましたか? その時に聞こえてくる声や音がありますね。そして、その場にいるような体の感覚、温かいとか、軽いとか、重いとか、呼吸が楽だとかを感じてください。可能であれば、その時の匂いや味も思い出します。こんなところに意識を向けるだけで、楽しい気持ちになったり、落ち着いた気持ちになったりします。1分くらい思い出すだけで気分が切り替わり、さっと仕事に戻れます。

 もしくは、近い未来、何の制約もなかったら、どんなことをしたいかという空想でも構いません。ハワイのビーチでのんびり過ごしたいとか、ヨーロッパに行って美術館を巡りたいとか、ニューヨークの雑踏に行って混沌とした街を見たい、など。本当にやるのか、できるのか、ではなく、想像した結果、「気分が変わる」ことが大事なのです

 これをするのは、職場のデスクより、外の冷たい空気でも吸って行う方がいいですね。空気が変われば、体も生理学的に変わります。実際、寒いのにわざわざ外に出てタバコを吸いにいくのは、本当にタバコが好きというより、タバコを1つのツールにして、気分を変えたいからです。だったら数秒、外の空気を吸って、ちょっとベンチに座って、お茶でも飲みながら楽しい場面を思い出して戻るだけでも、心の状態は変わります。

お香にアロマ、エンジンのオイル臭――匂いでも心の状態が変わる

 お香やアロマが好きな人は、好きな香りを思い出しただけでも落ち着きます。男性には車のオイル臭い匂いをかぐと落ち着くという人もいます。好きな味でもいいです。もしくは、ヒマラヤの景色を想像するだけで、気分が爽快になるという人もいるでしょう。人間は自分の中に、自分の心の状態を決められるすべての要素を含んでいるのです。

 心の状態をよくして、行動を始める。心をリセットして、始める。もしくは、先に自信を持って行動する。これらのすべての結果がいいとは限りません。悪い結果だったら、また体、言葉、意識の3つを変えてリセット。それでもダメだったら、また3つ変えてリセット。そうやっていくうちに、結果はどんどんよくなるはずです。

不景気だからこそ「なんでもやる」より「これができる」

 最後に、不況の中、ビジネスで生き残るためにはどうしたらいいかを考えてみます。

 以前、やる気にはテンションとモチベーションがあるという話をしましたが、心のスイッチはテンションに入ります。モチベーションには内発的なものと外発的なものがあり、外発的なものは、今は期待できません。ですから、内発的モチベーションが必要になります。これが何かというと、自分軸、つまり「価値観」と「ビジョン」です。

 現在のような不景気な時は、自分軸をしっかり持つことが重要です。この会社に来て、何がやりたいのかをはっきり持っている方がいい。自分軸を持っている社員を辞めさせることは、なかなか難しいでしょう。

 反対に「何でもやります」「仕事がもらえるだけでいいんです」という社員は、景気がよくて、猫の手も借りたいような忙しい時は重宝がられます。でも不景気で仕事がない時は、「だったら、あなたじゃなくてもいい」と思われてしまいます。「この技術だったら自信があります」という人は切りづらいし、色々なところで需要があるでしょう。

 不景気な時代だからこそ、自分軸を持っている人が強い。ただ、それだけだと落ち込んでしまうことがあります。テンションを上げて仕事をする必要がある時には、心のスイッチで心の状態を変える、というやり方になるのです。

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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本あきお(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は、『すぐやる! すぐやめる!技術 ― 「先延ばし」と「プチ挫折」を100%撃退するメンタルトレーニング』。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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