『代表的日本人』――リーダーはどん底に生きる藤沢烈の3秒で読めるブックレビュー

ビジネスに効く1冊の本質を、3秒で理解できるようにチャートでご紹介する書評連載。第1回は内村鑑三(うちむら・かんぞう)の『代表的日本人』です。

» 2009年04月01日 18時00分 公開
[藤沢烈,Business Media 誠]

誠 Biz.IDの新連載「藤沢烈の3秒で読めるブックレビュー」

 ビジネスに効く1冊の本質を、3秒で理解できるようにチャートでご紹介。古典的名著から最新ビジネス本まで、コンサルタントの藤沢烈さんが読み解きます。3秒で読めるブックレビュー、第1回は内村鑑三(うちむら・かんぞう)の『代表的日本人』です。


 明治に生きた思想家が著者・内村鑑三。『武士道』と並んで、日本人が書いた世界的ベストセラーである。ケネディが最も尊敬した日本人は上杉鷹山と言ったそうだが、本著に取り上げられていたのを読んだからだ。リーダーシップの最高の教科書であると、私は考える。

 巨大組織のリーダーだったが、生活は質素そのものだった西郷隆盛と上杉鷹山。西郷を例に取れば、現代の金額に換算すれば年収3000万〜4000万の身分にも関わらず、家賃3万円の家に住んでいたことになる。残ったお金もすべて部下に渡していたのだ。

 飢餓寸前の農民を目の前に、あくまで手続きを重視する官僚。「それならば手続きがすむ4日間は、農民とともに断食をしよう」と詰め寄って役人をあわてさせた二宮尊徳。

 教えを請いにきた藩主に対して、いつもの子供たちの講義が終わるまで外で待たせたのが中江藤樹。

 隆盛(りゅうせい)をほこる他宗教を批判し、何年も迫害されながら一人信念を貫いた日蓮上人。

 どん底の立場から物事を考え、行動しているのが共通点だ。ころころ変わる日本の首相や、高額ボーナスを得て逃げ去る世界的企業の経営陣らがリーダーに座る現代。リーダーシップを磨く上での最高のモデルは、日本に存在していた。

 組織の最下層の人々の目線で行動するリーダー。部下を持ち始めた若手ビジネスパーソンにこそ、読んで頂きたい1冊だ。

著者紹介 藤沢烈(ふじさわ・れつ)

 RCF代表取締役。一橋大学卒業後、バー経営、マッキンゼーを経て独立。「100年続く事業を創る」をテーマに講演・コンサルティング活動に従事。創業前の若者に1億円投資するスキームを企画運営し、話題を呼ぶ。「雇われ経営参謀」として500人以上の経営・企業相談を受けてきた。ブログに毎日書評を掲載し、現在900冊超。


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