開米 ちょっと別な例で見てみましょう。「ドラえもん」といえば、日本の国民的人気マンガで世界的にも有名な作品ですが、それを知らない人に紹介しようとすると、どうしても「主要な登場人物をざっと列挙してから、その彼らのストーリーを語る」という順番になりますよね?
庄司 まあ、そうでしょうね。人物が出てこないうちにストーリーを語るなんて無理でしょう。
開米 「個条書き」というのは、「登場人物一覧」をバラバラに列挙するには向いてますが、ストーリーを語るには向いてないんです。ストーリーというのは人と人の相互の関連性のつながりなので、個条書きで書くのはそもそも無理なんですよ。
庄司 なるほど……でも、セミナーテキストなんてほとんど個条書きですよね?
開米 はい。だから、個条書きだけのセミナーテキストは、ストーリーが弱いケースが多いです。テキストに書くのは登場人物一覧だけで、ストーリーを口頭説明で補ってるんですよね。
庄司 なるほど。じゃあ私のもそうなんですね? 「プロセス」とか「ナレッジ」というのが登場人物で、それは列挙してあるけれど、「プロセスを遂行するためにナレッジが必要」というような、「相互の関連性」については書いてない……つまりストーリーがない、ということ?
開米 その通り! そこなんですよ。結局のところ、
個条書きはストーリーを語るのには向いていない
わけです。そのため、
個条書きだけでセミナーテキストを書くと、登場人物一覧に該当する内容だけで、ストーリー部分の弱いものになりがち
という傾向があります。だから、個条書きで満足しないでほしいんですよ。
庄司 なるほどねえ……。考えてみれば、ストーリーがないと人の印象に残りませんよね?
開米 そうなんですよ。そこ、大事なところですね。
庄司 ドラえもんにしたって、「のび太はダメ小学生です」なんて人物設定だけ説明されても……。
開米 だから何? ってなもんですよね。
庄司 だから何? ですよね、ほんと。のび太とドラえもんの起こすドタバタと結末があるから面白いわけで。
開米 そうそう、それです。
ストーリーを書かないのは、一番おいしいところを捨てているも同然
なわけです。個条書きだけだとそういう状態になりやすいので、個条書きで満足しないでください。
庄司 個条書きでないとすると……。
開米 さっき、プロセスとナレッジの関係を図解したように、図解が効いてきます。それでは、庄司さんのセミナーテキストの1ページ、「営業マネジメントの4つの領域」を、相互の関連性というストーリーを踏まえて書き直すとどうなるか、検討してみましょう。
庄司 おっ、どうなるんですか? すんごく興味あります。
開米 では早速、といきたいところなんですが、長くなりましたのでまた来週!
IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』、
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