自利利他とオープンソース――創造的選択インタビュー全文公開(後編)達人のクリエイティブ・チョイス(5/6 ページ)

» 2009年07月24日 12時30分 公開
[鷹木創,Business Media 誠]

鎌倉の選択とワークライフバランスと

堀内 もう僕の言いたいことはほぼ話したかなあ。

吉川 ライフの話してないですよね。

堀内 そうそう! なぜ今日わざわざ鎌倉にお集まりいただいたりしたか。

堀内 僕は選んだとはいえ、嫁さんの地元で、どちらかというと主体的ではない(笑)。成り行き。でも鎌倉を選んだ。それまでは東京に住んでいた。2年間向こう(アメリカ)に行って、行きは3人だったのが、帰りは4人になっていて、やはり子育ての環境などを考えると、こっちがいいなあと。そういう意味ではチョイスですね。リスクとかはあまり深く考えなかったなあ。

吉川 僕ははたから見ていて、僕より遠くに通っていたじゃないですか。最初。

堀内 水天宮前とか。

吉川 すごいですよね。何時間かかっていたんですか?

堀内 2時間くらいですよ。でもアメリカとの合弁だったので、電話会議が朝早くて。向こうの時間に合わせると。電話会議なんだから家からさせてくれと思うのだけけれど(笑)。ちょっとお金がかかるので、東京来てみんなで会議室に集まって電話しなきゃいけないんですね。

吉川 柳澤さんってサーフィンとかしてるんですか?

柳澤 やりますよ。

吉川 やっぱりそれが目的?

柳澤 やってなくても選択してると思いますよ。やっぱり海と山。あとはその場の持っている、鎌倉の雰囲気とか。海と山があればいいのではなくて、地方で言うと静岡でいいかというとちょっとない気がしますし住んでいる人の意識が高い気がします。ごみの分別とかちゃんとやってますしね。あとは海。生まれが香港なので、毎週のように船を出して海に行ってたんですね。親父が釣りが好きだったので。小さいころなので香港そのものはあまり覚えていないけど。

細谷 めちゃめちゃ都会の真ん中に住んでいる人も増えてきましたよね。そんな住所ありえないという。

吉川 赤坂四丁目とかね。

柳澤 カカクコムの穐田(誉輝氏、同社相談役)さんもどっかすごいところに住んでますよね。ものすごいど真ん中。ちょっと忘れちゃったけど、皇居の近くの。

堀内 もうほとんど皇居な感じ(笑)。

柳澤 住む町は個性だと思うんですよね。こういう人を集めたいといっていない町はだめ。

堀内 アメリカの街の話ですけど、2002年に出た『The Rise of the Creative Class』っていう本。場所を選べるようになった労働者というのは集積をする傾向があって、シリコンバレーとか、シアトルとか、テキサス州のオースティンとか、ボストンとか。ある共通の傾向があるんですって、やっぱり。ゲイやレズビアンが多い、つまり多様性を許容するとか、都会と自然のバランスがいいとか。場の力というか土地の力は何かあるんですよね。鎌倉に関してはなんだか分からないけれども。

 たまたま先週レンタカーで八王子から戸塚までビューっと来て、下の道を通ってきて町並みを見るじゃないですか。鎌倉のよさってなんだろうなと思ったんです。もともとが狭い街。狭くて景観条例とかあって規制が厳しい。物理的に大きなスーパーも立てられないし、高い建物は建てさせないし、すごい厳しいですよね。その規制が、クリエイティブ・チョイスに無理やりつなげますけど(笑)、個性につながっているんじゃないかと。

細谷 だけど、本当の原住民じゃないけど、伝統的な祭りをやっている人は少なくなってきてますよね。中学校の時はクラスの3分の1は祭りをやるグループ。祭りの時期は1カ月ぐらい早退していいという学校公認。そういう率も減ってきてますよ。

柳澤 楽しみがいっぱい増えちゃったから。下の店をやっている感じからするとそこまで改革的な町じゃないですよね。保守的といえば保守的。

吉川 下のどんぶりカフェ(カヤック運営の「bowls」)は地元の人が多いんですか?

柳澤 半分ぐらいは地元の人が来てますね。後は観光の人です。元々鎌倉は夜に開いているお店が少ないんですよ。

堀内 少ないですよね。

柳澤 夜には観光でいらっしゃるお客さんが帰りますからね。

堀内 でも、じわじわとお店ができてますよね、ここの1階みたいに。

柳澤 増えましたね。少しずつ。ただ、宿泊所が観光地の割合に少ないかもしれません。

吉川 そうですよね、だから観光後に帰っちゃうんですよね。

柳澤 そうですね。横浜に行っちゃうだろうと思ってるのかもしれないですね。あればきっと泊まるのになあ。カヤックでもやってみたい。江ノ島とかでやってみたい。江ノ島とかまだありますよね、きっとまだうまくやれば。

吉川 江ノ島のあのものすごい高いお風呂屋さんあるじゃないですか、2000円とか3000円取るところ。うまく言ってるのかなあ。

堀内 何か吉川さんにとって、引っ越してきたことによって仕事にもプラスになったことありますか?

吉川 とにかく、うちの会社の連中が次から次へと引っ越してますよ。

堀内 それは吉川さんが楽しそうにしているから?

吉川 単なるタイミングだと思うんですけどね。僕も鎌倉出身のやつが住み始めたのがきっかけだし。

堀内 この辺に支社作ったほうがいいですよ。

吉川 ねえ、本当に。

柳澤 いや例えば逗子は博報堂の人多いと思いますよ。カヤックに行くのは直行だから大歓迎って言っていますから。

吉川 もう最高だと思ってますよ。もう御社でやりましょうよと。僕も名古屋から転勤する時に、いろいろ相談してたら鎌倉に越してきたやつがいて、そいつとなぜか午前中に田町で打ち合わせをしようねという約束を組んでいたんですが、はたと気づいてここでやればいいんじゃないかと。

細谷 クリエイティブ・チョイスだ(笑)。今、職住接近派のほうが多いんじゃないんですか?

吉川 だから極端に振れてますね。2極化。環八沿線とかあの辺に住む人が激減してる気がする。

細谷 ウチの周りは遠い人いないですね。

吉川 ウチはどんどんどんどん。

堀内 仕事の忙しさを考えると都心に移るというチョイスもありますよね。

細谷 ありますね。私はそっちがクリエイティブ・チョイスかもしれない。やってみたいですね。

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