普段は縁のない税金を分かりやすく説明するイチから分かる確定申告(2/3 ページ)

» 2011年02月17日 19時00分 公開
[奥川浩彦Business Media 誠]

 サラリーマンの人は、毎年11月〜12月に年末調整と称し、2枚の紙を提出しているはずだ。1枚は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」もう1枚は「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」だ。筆者自身、サラリーマン時代は何のために提出しているか考えたこともなく「出せと言われたから出す」といった感じだった。

 この2枚の紙(申告書)に書かれた内容によって、配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除などが決まる仕組みだ。筆者のように無関心で、何が書かれていたか思い出せない人は申告書の画像を開いていただきたい。まずは「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」を見てみよう。

 昨年末に配られた申告書は平成22年分で、内容は超長〜いタイトルの通り生命保険、地震保険、社会保険といった保険料控除と、奥さんがいる方の配偶者特別控除の申告書で、申告書の左側が保険料控除、右側が配偶者特別控除となっている。

 保険料控除の代表は一般の生命保険で、年間の支払額が10万円を越えていれば最高5万円控除される。個人年金保険にも入っていれば同様に最高5万円の控除となる。サラリーマン時代、筆者は何も考えず全ての保険を記入し、全ての保険会社の証明書を貼っていた。10万円を越える証明書を1枚貼れば済むことを知ったのはサラリーマン生活を終える数年前のことだった。

 生命保険の下には地震保険料控除の記入欄があり、こちらも最高5万円の控除。その下には社会保険料控除の記入欄があるが、筆者はサラリーマン時代に記入した記憶はない。おそらく会社が記入していたのだろう。その横には小規模企業共済等掛金控除の記入欄がある。筆者のような個人事業主には重要だが、そこそこ人数のいる会社に務めているサラリーマンには関係ない項目だ。

 右側の配偶者特別控除はそこそこ稼ぐ奥さんがいる人は重要だ。「103万円の壁」という言葉を聞いたことがないだろうか。パート務めの奥さんが年間103万円の収入があったとしよう。103万円の収入から必要経費として認められる65万円を引いた38万円が所得金額となる。年間の所得金額が38万円以下なら配偶者控除の38万円が控除される。要するに全く収入のない奥さんも103万円の収入の奥さんも、所得税的には同じ扱いとなる

 では奥さんに120万円の収入があった場合はどうだろう。120万円から65万円を引いた55万円が所得金額となる。すぐ下の早見表を見ると21万円が配偶者特別控除額になることが分かる。この場合、配偶者控除の38万円はなくなり、21万円の配偶者特別控除となるため、旦那さんの課税所得が17万円増えることになる。そして奥さんの収入が141万円になると配偶者特別控除は0円となる。

 次に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を見てみよう。昨年末に配られた申告書は平成23年分で、平成22年分と比べると何カ所か変更されていることが分かる。

 注目すべき変更点は赤枠で印を付けた部分だ。1つ目は特定扶養親族の対象が平成22年は「昭和63年1月2日生まれから平成7年1月1日生まれ」となっているのに対し、平成23年は「昭和64年1月2日生まれから平成5年1月1日生まれ」に変更されている。

 切れ目が1月1日と1月2日になっているので分かりにくいが、ざっくり言うと平成22年分は昨年、平成22年に16歳から22歳になった人、要するに高校生と大学生が対象。平成23年年分は今年、平成23年に19歳から22歳なる人、大学生だけが対象となっている。

 扶養親族は38万円の控除だが、特定扶養親族なら控除額は25万円増え63万円となる。平成22年の場合、「高校生、大学生を持つ親はお金が掛かるので、税金を少なくしましょう」という制度だ。それが平成23年は対象が大学生だけになる。なぜ? 理由は高校授業料の無償化のためだ。高校生の授業料(基本11万8800円)を無償にするので、その代わり高校生がいる親の税金を増す――。要するに増税なのである。

 2つ目の変更点は、平成22年分では「B扶養親族」となっているのが、平成23年分では「B控除対象扶養親族(16歳以上、平成8年1月1日以前生)」になっている。これにともない、平成23年分の最下端に「住民税に関する事項」が加わり「16歳未満の扶養親族(平8.1.2以後生)」を別欄に記入するようになった。今年、平成23年に0歳〜15歳までの人、平たくいうと中学生までが変更の対象ということだ。

 さて、どう変わるのか? 平成22年までは子供がいれば全て扶養親族だったのが、平成23年から中学生以下は扶養親族から外れ、38万円の控除から対象外になる。これは中学生以下の子供がいる家庭には「子ども手当」が支給されるから、控除を減らして増税しましょうということだ。

コラム:誕生日の前日に歳をとる

 「昭和64年1月2日生まれから……」という表記を見て疑問を感じた方がいると思う。法律的というか役所的には、誕生日の前日に年齢が上がるということらしい。1月2日生まれの人は1月1日(前日)に1つ歳が増える。1月1日生まれの人は前年の12月31日に1つ年齢が上がるということだ。

 なので「昭和64年1月2日生まれから平成5年1月1日生まれ」は普通の感覚で表現すると「昭和64年1月1日生まれから平成4年12月31日生まれ」となる。ちなみに国税庁のWebページには「※2 特定扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人をいいます」と書かれていて、こちらの方が分かりやすい。

 学年の切れ目も普通の感覚では3月までに生まれるのと4月以降に生まれるので1つ学年が異なるのだが、4月1日生まれは3月31日に年齢が上がるので、1つ上の学年の一番年下となる。

 筆者がこのことを知ったのは1983年の夏だった。PL学園、読売ジャイアンツで活躍した桑田真澄投手は1968年4月1日生まれ。高校1年生の夏の甲子園で優勝投手となり、15歳史上最年少優勝投手、4月1日生まれなので誰にも破られない記録として話題になった。もし桑田投手が1日後に生まれていたら学年は1つ下になり、KKコンビ(桑田と清原)は同級生ではなかった。

 しかし、一般庶民に前日に年齢が上がるという感覚はあるのだろうか。誕生日前日「今日は20代最後の日」と言うアラサー女性に「もう30歳だよ」とは口が裂けても言えない気がする。役所勤めの人は、子供の誕生日の前日に「今日で○○ちゃんも5歳になったね」と言うのだろうか……。不思議である。


インフレ時代の確定申告

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