NHN Japanは無料メッセージングアプリ「LINE」の本格事業化に向けた新構想を発表した。パートナー企業と協力してLINEユーザーにデジタルコンテンツを提供するプラットフォーム展開をしていく。
コミュニケーションツールから、プラットフォームへ――NHN Japanは7月3日、パートナーとプレス向けのカンファレンス「Hello, Friends in Tokyo 2012」を行い、同社のスマートフォンアプリ「LINE」の本格事業化に向けた新構想を発表した。
発表された内容は大きく次の3つだ。(1)パートナー企業と協力してLINEユーザーにデジタルコンテンツを提供するプラットフォームアプリ「LINE Channel」のリリースや(2)LINEのソーシャル機能の強化、(3)KDDIとの事業提携によるauスマートパス限定バージョンの「LINE for au スマートパス」の提供など。
LINEは2011年6月23日にリリースされたスマートフォン向けアプリで、無料通話やチャットができるメッセージングアプリとして知られている。電話番号にひも付いて友人や家族など親しい人と気軽にコミュニケーションが取れ、「スタンプ」と呼ぶ独自キャラクターの絵柄を使って文字だけでなく「感情」を表現できるのが特徴だ。iPhone、Android、Windows Phoneに加えて、MacとWindowsのPC向けにも提供している。
7月1日時点での登録ユーザー数は、世界4500万人、国内だけでも2000万人を突破した。日本人の約6.5人に1人、国内スマートフォンユーザーの44%がダウンロードした計算になる。LINEのユーザーは、10代後半から20代後半が約半数で、職業は会社員が40.5%、学生が24.2%の順に多い。1カ月に1回以上利用するアクティブユーザーが82.0%、全ユーザーのうち20.1%は1日に4回以上、15.7%は1日に2〜3回の頻度で利用している。
ビジネス面では、2012年4月に公開したLINEの有料スタンプが好調で、2カ月間の累計売り上げは3億5000万円に上った。企業や有名人による「公式アカウント」もローソンが110万人以上、映画『アメイジング・スパイダーマン』が105万人以上の登録があり、プロモーションツールとして着実に実績を重ねている。
そんなLINEが今回、リリースから約1年で新たな展開を開始する。まずはプラットフォームサービス「LINE Channel」だ。これはLINEのユーザーを対象に外部パートナーによるゲームや音楽、クーポン、占い情報などのデジタルコンテンツを提供していくスマートフォンアプリで、近日中にiPhoneとAndroid版をリリースする。
第1弾として、ゲームと小説(現在はLINE内でトークノベルというアカウントで提供しているもの)、占い、クーポン、音楽コンテンツを7月以降に順次提供していく。
現状で公表しているパートナー企業は、小説などのコンテンツ面で講談社、「ホットペーパー」のクーポンを提供するリクルート、音楽はレコチョクだ。カンファレンスではその他にもニュース、ショッピングなどの構想も紹介した。ゲームについてはNHN Japanの運営するインターネットゲームポータルサイト「ハンゲーム」のソーシャルゲームとの統合なども視野に入れているが、マネタイズなど詳細はまだ決定していない。
併せて、LINE Channel内の有料コンテンツを購入するモバイル決済サービスとして、「LINEコイン」もリリースする。ユーザーはあらかじめ購入しておくLINEコインを使ってLINE Channel内の有料コンテンツを利用できる。
「人と人をつないできたLINEが、LINE Channelでスマートフォンユーザーとデジタルコンテンツをつなぐゲートウェイになる。ユーザーはLINE上でショッピングやムービーを楽しめる、プラットフォームサイトにアクセスするイメージで、それがいつでもどこでも利用できるスマートフォンからLINEでできるようになる」と森川亮代表は話した。
2つ目の発表は、LINEのソーシャル機能の強化だ。自分専用のパーソナルログを取って、友人にも公開できる「ホーム」と、LINEでつながっている友人の近況がリアルタイムに分かる「タイムライン」機能を追加した。
ホームに投稿できるのは、テキスト、写真、動画、位置情報などLINEのトーク機能でおなじみのもの。ホームを公開している友人のホーム画面は友人間で見ることができ、友人の投稿内容に対してコメントをしたり、LINEのスタンプで「かわいい」「残念!」など自分の感情を表現したりできる。
なお、友人の近況を、タイムライン形式でまとめて閲覧するタイムラインも、ホームと同じくLINEのスタンプで感情を伝えられる機能を備えている。タイムラインに表示する情報についてはLINE Channelでの購入履歴などは現状では含めないが公開/非公開の設定で可能になる場合もある。LINEは電話番号を知っている人同士のリアルなつながりで成り立っているので、感情を共有できるLINEでより信頼性の高い情報を共有できるというわけだ。
そしてKDDIとの業務提携では、LINEとKDDIが運営するスマートフォン向け事業「auスマートパス」とのサービス連携を発表した。
auスマートパス利用者に向けて、2012年9月にauスマートパス限定バージョンの「LINE for auスマートパス」を提供する予定だ。auスマートパス会員特典として、オリジナルキャラクターを用いた限定スタンプを無償で提供するほか、LINE公式アカウントとしてauスマートパスに関係する最新情報などを配信する。
今回の提携は、KDDIがLINEのユーザー数拡大に着目し、かつ以前より交流のあった両社が同席した場で話が出て、約3カ月間の期間を経て決定したという。スマートフォンビジネスを進めるうえで利用者が多いLINEと提携することでauスマートパスの利用者増を狙いたい考えだ。その他、両社は未成年者の保護などスマートフォンアプリが抱える問題などについても知見を共有しながらサービス展開をしていくという。
LINEは当初、国内ユーザーを意識して作られたアプリで、世界展開を意識していたわけではないという。しかし蓋を開けてみればユーザーの割合は世界が約6割、国内が約4割となっている。「今後は国内の割合を3割とみて、2012年内で世界1億ユーザー数を目指す」(森川亮代表)
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