前回「職場のみんながあなたの机を見ている」でも触れた通り、机は主である自分がいない時間も短くありません。その間にさまざまな目的で同僚たちがやってきて、机の状態やそこにあるものを見て、イメージをふくらませていることを再度認識してほしいのです。
このプロセスを逆手にとり、より自分にとってスムーズに希望した通りに物事が運ぶようなイメージを同僚たちに与えるため、「意図的に机から発信する情報を変化させる」発想が、僕の言う偽装です。
偽装にはいろいろあります。
などなど、ここからは机から発するイメージをコントロールするテクニックを述べていきます。
(だんだん、やりたいことが自分の中で明確になってきたな)
三崎は日に日にそんな思いを強くしていた。と同時に、出木杉の本当のすごみが分かってきた気がした。
(出木杉の本質は、机がきれいなことでも道具にこだわっていることでもない。知識や能力が豊富なことでもない。「自分は何をしたいか」が明確で、そこに一直線に進んでいることなんだな)
三崎は外出先からの帰り道、書店の店頭に立っていた。
商品開発だけでなく、いつか手掛けてみたいものがある。それはマーケティングだった。
月光堂は、三崎や出木杉たちのような理系・修士卒の場合、マーケティングにはあまり縁がない。そこは文系社員、営業系社員の金城湯池なのだ。しかし本当は理系にこそできるマーケティングがあるのではないか。そんな思いを育てていた三崎は、ひとまず自己流で勉強を始めることにしたのだ。
何冊か目当ての本を買ってオフィスの机に戻る。紙袋から出しているとアカハナが声をかけてきた。例の「ちょっと来てくれ」だ。
取りあえず本はそのまま置いて、打ち合わせコーナーに向かった。ありがたい説教を拝聴し、アカハナが外出する時間になってようやく三崎は解放された。自席に戻ってくると、今度はあこがれのボスに声をかけられた。
「三崎くん、マーケティングに興味があるんだね」
「いえ、まだ勉強し始めたばかりなんですけど」
「私、最近母校の大学で週1回講師を頼まれちゃっているんだけど、そこにマーケティング界で有名な先生の社会人向け講座があるのよ。うまく申請できれば社費で通えるはずなんだけど、興味ある?」
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