「両面提示法」で、押しつけがましくなく押しつける思うように人の心を動かす話し方(1/2 ページ)

人を説得するためには、こちらの都合がよい情報ばかりを並べて説得する「一面提示法」と、対立する立場の理解できるところやこちらに不利な情報も交じえつつ、総合的に説得する「両面提示法」がある。相手の教育レベルや情報量によって、提示法を使い分けることが肝要だ。

» 2013年10月15日 11時00分 公開
[榎本博明,Business Media 誠]

集中連載「思うように人の心を動かす話し方」について

 本連載は、榎本博明氏著、書籍『心理学者が教える 思うように人の心を動かす話し方』(アスコム刊)から一部抜粋、編集しています。

「お1人さま3個までに限らせていただきます」と言われて、つい列を作って並んだり、本当に必要でもないのに商品を3個も抱えてレジに走ったりしていませんか? 実はこれ「今買わないと損!」と思わせて、お客を殺到させたり商品に飛びつかせたりするための、人の心を操る心理テクニックです。

あるいは「話だけでも聞いてください」と言われて、最初はまったく買う気がなかったのに、気付いたらとんでもない買い物をしてしまった……なんていう経験はありませんか? これは“フット・イン・ザ・ドア”と言われる、思うように人の心を動かす心理テクニックの1つです。

はじめからお願いしたら到底受け入れられない法外な要求でも、いつの間にか受け入れさせてしまう魔法のフレーズなのです。

他にも「どうぞ、お座りください」「そうですか、では……」「お隣のAさんもBさんも」など、人の心をぐぐっと動かすキラーフレーズや心理テクニックは世の中にたくさんあふれています。

誰でもすぐに使えて効果絶大な心理テクニックを本書ではたっぷり紹介しています。ぜひあなたも試してみてください!


一面提示法と両面提示法

 人を説得するためには、こちらに都合のよい情報ばかりを並べて説得する方法と、対立する立場の論点のうなずける点やこちらに不利な情報も交じえつつ説得する方法がある。

 前者を一面提示法、後者を両面提示法という。

 かなり昔のことになるが、私は大手スーパーの電化製品のフロアで数カ月間販売員をしていたことがある。

 できるだけたくさんA社の製品を売るのが私の役割であったが、B社と契約を結んでいる販売員やC社と契約している販売員などライバルがたくさんおり、しかも向こうは何年も経験を積んだプロばかりだったので、かなりの苦戦を強いられた。

 初めのうちは、お客をつかまえると、とにかくA社のパンフレットを手にその製品のすばらしさを訴えて、何とか買ってもらおうと説得を試みたが、なかなかうまくいかなかった。そのうち、自分のやり方はやや性急にすぎるのではないかと気づき、戦略を変更した。

 まず、他社のパンフレットにもしっかりと目を通し、それぞれの製品のセールス・ポイントや短所を頭にたたきこんだ。そして、お客をつかまえるとA社の製品ばかりでなく、B社やC社の製品の前にもお客を連れていき、それぞれの長所や短所を分かりやすく説明することにした。

 そうしておいて、最後に総合的観点からのアドバイスという形で、A社の製品を勧めるようにしたのである。例えば、こんなかんじで。

 「まあ、結局モーターの性能に関してはB社が一番でA社がそれに次ぐといったところですかね。重電をやっていないC社がやや劣るのはやむを得ないでしょうね。

 でも、使う人の身になって使い勝手をよく研究しているのはC社ですね。かなり機能性を考えて作られていますね。B社の製品はモーターの性能はよくてもどうも機能性がよくない……、デザインもちょっとパッとしない感じですよね。A社はC社ほどでないにしても、けっこう使いやすくできている。デザインはかなりいいですね。

 総合してみると、A社の製品が無難じゃないでしょうかね。価格的にも今はセール期間中で一番お得になっていますし……」

 つまり、はじめのうちは一面提示法を用いていたのを、両面提示法に変えたわけである。その結果、うまくA社の製品を売るのに成功した。

 私がお客をつかまえてはA社の製品を売りつけてしまうので、他の会社と契約している販売員たちから店の裏の倉庫に呼び出されて、あまり張り切るなと警告されるほどだった。

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