【オンタイム編】プレゼン前に信頼を勝ち取るための“雑談術”岩淺こまきのON/OFFで使えるプレゼン術

プレゼンテーションの内容や話し方が大事なことはいうまでもありませんが、その前後の“雑談”も実は重要なもの。今回は、プレゼン前後に信頼を勝ち取るための雑談術をご紹介します。

» 2013年09月02日 09時00分 公開
[岩淺こまき,Business Media 誠]

岩淺こまきのON/OFFで使えるプレゼン術

 プレゼンテーションが苦手だと思っている人、ちょっとしたコツを知っておくだけで、プレゼン上手になれるのをご存じですか?

 この連載では、プレゼンテーションスキルを磨くためのテクニックをご紹介します。といっても、ただ、ビジネスに役立つテクニックを紹介するのでは面白くないので、私生活で役立つテクニックも合わせてご紹介することにしました。

 月曜日にはオン(ビジネス)、金曜日にはオフ(私生活)で役立つプレゼン術を公開します。


 プレゼンテーションの機会を持つと、ほぼもれなく雑談の機会がついてきます。

 相手とは初対面の時もあれば、何度も会っている時もあるでしょう。1対1の場合もあれば、複数人の場合もあります。状況や場面は様々ですが、そこには雑談と言われるコミュニケーションが発生します。誰かから「はい、じゃ、プレゼンしてください」と言われ、一方的にプレゼンターが説明し終了する――というケースは少ないはずです。

 まずは顧客先でのプレゼンを思い出してみましょう。顧客と受付で会ったら会議室に向かうまでの間、席について本題に入る前、プレゼンが終わって帰る準備をしている間など、お互い無言ではないはずです。相手となにげないコミュニケーション、つまり「雑談」を交わしています。この「雑談」の仕方を間違うと、信頼関係を築く上での障害になります。今回は、オンの時だけではなく、オフの時にも共通して覚えておきたい、雑談時のポイントをご紹介します。

相手の“人となり”を知る上で重要な「雑談」

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 そもそも、人がどんな相手となら信頼関係を結ぼうと思うか、好感を持つようになるかを考えてみましょう。大きな要素の1つは「自らの承認欲求を満たせる人かどうか」です。承認欲求とは、“自分の存在を認めてほしい”という、人にもともと備わっている欲求です(参考:マズローの欲求段階説:A.H.Maslow アメリカの心理学者)。

 自分に敬意を表してくれるのか、自分が価値のある存在であることを認識させてくれるのか――がポイントになるわけです。ただ、存在を認めるといっても、それほど難しく考えなくても大丈夫です。承認欲求を満たす行為には「名前を呼ぶ」「感謝の言葉を伝える」「挨拶する」「アイコンタクトをとる」「相手が言ったことを覚えておき、会話に入れる」など、簡単な行動も含まれます。

 例えばあなたが聞き手の立場だったとします。プレゼンターが「(笑顔で全員とアイコンタクトをとりながら)改めまして、お忙しいところありがとうございます! ○○様から先日お聞きしましたご要望に関しまして、今日はまとめてまいりました……」と、きちんとした挨拶から始めるのか、「(誰ともアイコンタクトをとらず、だらしない態度で)あ、どうも、それでは今日の内容ですが……」と始めるのかで、聞き手であるあなたの心持ちが変わってきませんか。

 おそらく前者のプレゼンターの話の方が、好意的な気持ちで聴けるのではないでしょうか。これは、プレゼンターが挨拶やしぐさであなたの承認欲求を満たしているからなのです。

相手の承認欲求を満たさない雑談はNG!

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 次に、相手の承認欲求を満たさない雑談がどんなものなのか見ていきましょう。

 1つ目は相手が複雑な気持ちになるやりとりの一例です。

自分 「そういえば、どちらのご出身ですか?」

相手 「○○県の××です」

自分 (全て笑顔で)「なんにもないところですよねー」or「知らないです、どこですか?」or「あ、危ないところですよねー」

相手 「そうですね、まぁ、田舎ですから(苦笑い)」

 いくら笑顔であっても、相手の自尊心を傷つける言葉を使うのは問題です。“なんにもない”ではなく「自然に恵まれたいいところですね」と表現したり、場所を知らないなら範囲を広げて「○○県といえば、△△が美味しいですねー」と褒めるなど、いくらでもポジティブな反応はできるはず。知ってる情報を出せばよいというものではないし、ネガティブな言葉を使って、相手を複雑な気持ちにさせることはないのです。

 2つ目は自分の話ばかりに終始するケースです。

相手 「最近忙しいですか?」

自分 「そうなんですよ、なかなか忙しくて……(どれだけ忙しいかという話が延々と続く)」

相手 「そうですか、お忙しいですね。実は私も先日LAに出張がありまして」

自分 「LAですかー、私も2年前出張でいきましてね、そこのクライアントが(自分が行ったLAの話が延々と続く)」

 忙しいですか、と聞かれたら、一言答えて、○○さんはお忙しいですか? と相手を気遣うのが礼儀というもの。自分ばかりが話してスッキリしても、満たされるのは自分の承認欲求だけで、相手からの承認は得られません。

 3つ目は、相手が避けたい話を持ち出す雑談です。

自分 「そういば、先日○○さんから、お嬢さんが大学受験とお聞きしました!」

相手 「えぇ、まぁ……(引き気味の反応)」

自分 「いかがでしたか?」

相手 「いやー、まぁ」

 相手の家庭内事情や病気、相手の会社事情、宗教、ブラックジョークなどの話題は雑談には不向きです。特に、この会話にみられるような“第三者から聞いた未確定情報”を持ち出すのはとても危険。お嬢さんが合格した、というポジティブな確定情報を得たならまだしも、未確定のままだと微妙なことにもなりかねません。以前に相手が言ったことを覚えておいて会話に出すのはよいことですが、言われて相手が反応に困るような話題は出さないことです。

 総じていえるのは、「相手の承認欲求を満たさない雑談はNG」ということ。大事なポイントは、「承認欲求を満たしたかどうかを判断するのは、相手である」ことです。残念な雑談をする人も、決して悪気があってやっている訳ではありません。自分ではよかれと思ってやりとりをしているのに、結果的に相手の承認欲求を阻害して、嫌われてしまうのです。

 たかが雑談、されど雑談。有意義な時間になるよう、相手の承認欲求を満たすよう心がけてみましょう。

著者プロフィール:岩淺こまき

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 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師

 大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。

日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。



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