プレゼンで真っ先に考えるべきは「どのような人々がそれを聞くのか」ということ。これが「聴衆分析」です。例えば、福島原発の問題や計画停電における東京電力の記者発表も1つのプレゼンでしたが、聴衆分析はできていたでしょうか? われわれ国民の知りたいことに答えていたでしょうか?
プレゼンには2人の登場人物がいます。話し手(プレゼンテーター)と聞き手(オーディエンス)です。そして「プレゼンとは、話し手が聞き手に、何らかのアクションを起こしてもらうよう納得させる提案を行なうこと」なのです。
プレゼンの目的を果たすには、まず聞き手をよく知ることが大事。そのための枠組み(フレームワーク)をご紹介したいと思います。
プレゼンテーションで真っ先に考えるべきは「どのような人々がそれを聞くのか」ということ。つまり「聴衆分析」です。例えば、福島原発の問題や計画停電における東京電力の記者発表も1つのプレゼンでしたが、聴衆分析はできていたでしょうか? われわれ国民の知りたいことに答えていたでしょうか?
聞き手によって、話すべき内容やシナリオラインの組み立ては変わります。まずは相手の性別、人数、年齢、地域などの基本属性がポイントですが、ビジネスシーンであれば、相手方の業種や仕事内容、役職などを押さえておきましょう。もちろん、聞き手が決裁者なのか、上司におうかがいを立てなければならない現場担当者なのか――も重要なチェックポイントです。
こうして聴衆が分析できる場合は、そのチェックポイントごとに話をまとめればいいのですが、難しいのは聴衆を絞り込めない場合。例えば、先ほどの東電の記者会見は、聴衆が国民全体でした。幅広い年齢層や地域の聴衆に対して、情報提供することになります。聴衆の絞りこまれていないプレゼンは一番難しいものです。
さらに、聞き手がプレゼンに使われる専門用語やその領域の知識をどの程度、知っているのかを把握しておきましょう。聞き手のレベルに合わないプレゼンだと「難しすぎて分からない」「知っていることばかりでつまらない」ということになってしまいます。
事前にチェックできない場合は、プレゼン内容を一番優しいレベルに合わせるべきでしょう。専門用語はすべて一般的な言い回しに変更すべきです。
福島原発の会見では、放射線についての予備知識のない国民に対して「格納容器」「マイクロシーベルト」など聞きなれない言葉を連発しました。そのため聴衆は、重要なのか、軽微なのかを見分けることができずにストレスがたまったのです。
プレゼンを聞く人は、その真剣度合いがマチマチです。とりあえず情報収集したいというタイプもいれば、プレゼンを聞いて何かを判断したいと考える人もいます。
前者の場合は、全体像を知りたがりますが、後者の場合は、より具体的な費用対効果やケーススタディ、実行手順などを望むはずです。聞き手が求めるプレゼンのゴールを把握しましょう。
さきほどの原発問題では、原子炉の状況に応じて、どのようなリスクがあるのかが明示されなかったため、デマも含めたチェーンメールが横行し、マスコミの報道もあり、必要以上に不安を煽る結果になったと思います。そのため、原発に近い避難エリアに物資が届かない、避難エリア外の人々の過剰反応を引き起こしました。
聴衆分析は、プレゼン内容を聞き手に合わせる意味で大変重要です。聴衆分析を行ったうえで組み立てたシナリオは、聞き手の満足度も高く、プレゼンの提案に同意してくれる可能性も飛躍的に高まります。
業務報告、説明会、セミナー――。身近な誰かを納得させたい時、その聞き手が誰なのか、どんな人なのかを今一度考えてみてください。
パワポの前に「図」で考える――。ベストセラー『頭がよくなる「図解思考」の技術』の第2弾となる本書は、プレゼンテーションの根幹とも言える「メッセージをどう作り、どのように伝えるのか」を図で整理する方法を解説しています。
「見栄えのいいスライドを作ること」や「説得力のある話し方をすること」も当然大事ですが、プレゼンの目的(メッセージ)そのものが洗練されていなくては、聞き手の心には届かないからです。営業プレゼンテーションや講演に限らず、ちょっとした説明や商談、または報告などにも応用可能で、あらゆるビジネスシーンで活躍するはずです。
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。
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