マッキンゼーは「アンケート」を仕事にしないマッキンゼー流仕事術(2/2 ページ)

» 2013年10月16日 09時00分 公開
[大嶋祥誉,Business Media 誠]
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仮説から思考と分析をスタートさせる

 「若い女性と男性ビジネスパーソン両方に利用される新食材を使った新業態はあり得るか?」

 こうした仮説(イシュー)から思考と分析をスタートさせることで、YES/NOどちらの可能性も落とさずに検証することがコンサルティングに求められるわけです。このとき、クライアントは期間限定のイベント会場で新食材を使った新業態カフェを実験的に立ち上げていたのですが、その会場でアンケートを行い、どのセグメント(客層)にこの新食材がうけるのか? どのようなスタイルで販売できるか? 検証することにしました。

 さて、どんなアンケートにすればいいのか。「なぜ、このお店を選びましたか?」というようなふつうのアンケートをしても、想定されるようなデータしか集まりません。「クライアントにとってバリュー(価値)ある仕事は、単なるアンケートから得た情報からでは得られない」――マッキンゼーには、そういった考え方があります。AとBのどちらが好きですか? と尋ねるような仕事はするなという意味でもあります。

 そんな単純なアンケートでは、クライアントが想定している以上のバリューを提供することはできないからです。どんなアンケート設計をすれば、想定を超えるような発見ができるのだろう。社内のリサーチスペシャリストなどにも相談し、データベースで絞込みをしながら苦労してアンケートを作りました。

 イベント会場でアンケートを行うときも、来場した老若男女の行動を観察したり、さりげなくヒアリングを行ったりします。機械的にアンケートだけを集めても意味がないのです。例えば若い女性と男性ビジネスパーソンの両方に利用される場合、どのような「食べる」シチュエーションを提供するといいのか? というサブイシューに広げ、朝食としてビジネスパーソンが利用するか?といった仮説も検証できるように、アンケートの内容を幅広くする工夫もしました。

 食べる時間帯や、食への嗜好、日ごろの食のスタイル(家カフェが好きか、外カフェが好きかなど)といったことも含めて、さまざまな視点からアンケートを実行したのです。最初に私が作ったアンケート案は、顕在的なニーズは拾えても潜在的なものが出てこないアンケートでした。でもそれでは、単なるアンケートのためのアンケートになってしまいます。

 ここでもやはり重要なのは「So What?(だから何?)」の考え方です。アンケートを作ることが目的ではなく、そのアンケートで何ができるかを考え、そこから見つけたバリューを使って、どんなストーリーが描けるかまで落とし込まれていることが必要です。

 自分でも「これならいける」と思うものにしてから、マネジャーに「このアンケートで実施したいと思います」という相談をするのがマッキンゼーの流儀。中身が固まっていない不完全なものは、例え社内の上司への報告であっても出すべきではない。あらゆるプロセスで完全なものを積み上げていくことが、バリューにつながるという考え方なのです。

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