では現状、どのような人がfreeeを使っているのだろう。佐々木氏によると大きく2つの層に分かれるという。1つはfreeeがないときから自力でfreeeに近い会計プロセスをしていた人々だ。具体的にはMacユーザーで、自力でデータをPCに打ち込んでいたが、こうすればもっと効率化できるんじゃないかとアプリやツールを探していた人。先日紹介したfactoryのオーナー、西原典夫さんもそうだ。西原さんの場合、Twitterで店舗仲間などにfreeeのことを知らせることで、そこから口コミで広がった事例でもある。
もう1つの層は、まさにこれから新規でビジネスを立ち上げる層。そうした人々にとっては会計ソフトの第一選択肢がfreeeで、今の時代はこれ(クラウド)が当たり前だという考えをもっているという。
「もともと会計処理は作業でしかなくて、そこで入力して得た結果からデータをどう活用するか、分析の部分が本業になる。あるユーザーさんからは、今まで気にしていなかったデータに興味を持つようになって面白いと言われた。つまり、freeeを使うことでより創造的な時間にフォーカスできるようになった」(佐々木氏)
freeeによって会計処理が効率化されることで、税理士の仕事がなくなるのではないか、といった声が一部である。しかし税理士からすれば入力、つまり記帳代行業務は本業ではない。これまで税理士に依頼していた中小企業がfreeeを使うことで、税理士自身の仕事も効率化され、本業に専念できるようになるのだ。
よく弥生の会計ソフトと比較されることもあるが、佐々木氏は「ターゲットセグメントは同じ」としたうえで、「freeeはあくまで中小企業の経営者にとっての使いやすさを追求した会計ソフトであり、バックオフィスの効率化、ビジネスの自動化に必要なアップデートを図っていく。会計ソフトの老舗がこうだから、freeeもこう、ということはない」とコメントしていた。
佐々木氏に今後強化していきたいポイントを聞くとUX(User Experience)とタブレットへの最適化を挙げた。今でも評価されているポイントだが、freeeは誰でも簡単に使えるシンプルなデザインが評価され、「2013年度グッドデザイン賞」を受賞した。デザイナーは何人いるのかと聞くと「1人もいない。社員12人中7人がエンジニアで、それぞれが担当部分の企画からメンテナンスまでを一環して行っている」と答えた。ユーザーからの要望にスピーディに対応し、日々機能アップを図っている。今後はより人が見て直感的に気付きのある入力インタフェース、継続して利用したくなるようなインタフェースを目指すという。
もう1つの強化ポイントであるタブレットへの最適化は、2015年にタブレットがPCの出荷台数を抜くという米IDCの調査結果を得てのものだ。「タブレットの普及は中小企業に間違いなく大きなインパクトをもたらす。そのときにタブレットでもっと使い安くて効率的なものになっているように仕上げていく」(佐々木氏)
最後に佐々木氏は、「当面はユーザーが満足するものを作っていく。そうすれば結果は後から付いてくる」と話していた。freeeは公式ブログやTwitter、Facebookを通じてユーザーとコミュニケーションを図り、日々機能アップを図っている。数年後、freeeが米国財務ソフト企業のイントゥイットのような存在になっていることを期待したい。
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