クオリティの低さは時間でカバーできるのか?アタマの片付け

相手に仕事がデキる、デキない、と思われる判断基準が「時間管理」と「品質」。この2つのバランスを保ちつつ、常に軌道修正の余地を残しておくことがすべてのプロに求められる要件といえるでしょう。

» 2014年02月06日 11時10分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

連載『アタマの片付け』とは

 頭がモヤモヤしている人。迷ってなかなか判断できない人。問題をどう解決したらいいのか途方にくれている人。モノの片付けとは異なり、頭の片付け方は一朝一夕にはいきません。見えないし、イメージが湧きづらいのです。

 しかし頭がキレイに整理され、無駄なく、目的に応じて働くようになれば、モノの片付け以上に大きな成果を生み出します。さあ、始めませんか? 頭の片付けを!


 仕事のデキる、デキないという指標の1つに時間管理があります。あらかじめ設定された時間内にアウトプットがある人は、安心して次の仕事を頼んでもらえます。では、締め切りに間に合わない人はどのような対処をしたらよいでしょうか。

 1つ考えられるのは、締め切り前のしかるべきタイミングで延長を申し出るケース。例えば「ほぼ完成しているが、クオリティを上げたいのでもう少し猶予がほしい」とリクエストする場合です。多くの場合は、クオリティが上がるなら少しは待とうと考えてくれるのではないでしょうか?

 ところが、同じ延長するにしても、相手から指摘されて延長する場合は少し勝手が違います。「すいませんが期日を過ぎているので一刻も早くいただけますか?」と相手から突っ込まれて「すいません。まだ渡せる段階にないのです」と返した場合は、間違いなく次のオファーは来ないでしょう。同じ延長するにしても、時間に関する許容度や価値観で相手への印象は180度違うのです。特にネガティブ情報は、先回りした気遣いが大事です。

100%のクオリティは合格点か?

 仕事のデキる、デキない、の判断基準のもう1つは、品質です。普通に考えて求められるクオリティに達していれば、業務は遂行したように思えます。もちろん、それは間違いではないのですが、必ずしも次回のオファーが来るとは限りません。次回のオファーが確実になる人は、常に相手の想定するクオリティを超えることにあります。

 超える、と一言でいっても、それは限られた時間やリソースの中ですから、とんでもないすごいものを成果として残すことは難しいもの。しかし、相手の考えるものを100%としたときに、100%のものを提出しているからといって相手は本当に満足しているでしょうか? そんなことはありません。「当たり前」と思われるだけです。

 プロの仕事は、相手の想定を超えることにあります。それは1%でも5%でもよいのです。相手の想定を超えましょう。相手が「ほう、こんなこともやってくれた」と思ってくれれば、次回のオファーにつながります。次回はどんなサプライズがあるのか、相手は知りたいのです。

相手の想定を超えるためにはパレート仕事術

 相手の考えを1%でも5%でも超えるためには、全体の時間管理をもっと「前倒し」にする必要があります。具体的には、プロジェクト全体の頭2割のところで、モックアップ、概要、試験実施などを行ってみることです。

 「パレートの法則」というのは、全体の8割の成果は2割の働きによるもの、という経済学的な傾向を表現したものです。これを時間管理でいえば、2割の時間で8割の完成度になる、と置き換えることができます。

 つまり、2割で8割の完成を早めに関係者に確認してもらい、要望やレビューをもらって、改善していくわけです。残り8割の時間を使って改善するわけですから、最終的なクオリティは100%を超えるわけです。

 一方、最初になかなかエンジンがかからず最後のほうになって、ぐんぐんクオリティを上げるタイプの人もいます。しかし、そういった人は一部を除けば、前述のパレート型に比べて最終的な完成度は低いものです。

 思いもよらない理由で方向性が変わることはあります。関係者と握っていたはずの仕様や条件が途中で変更になることも少なくありません。そういったときに、変わったことに文句を言っても仕方ないのです。一番の問題は変化に対応できる体制や準備を作っておかなかった自分に降りかかってきます。

 軌道修正の余地を残しておく。これはすべてのプロに求められる要件なのです。

著者紹介:永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 ビジネスマンの「知的生産性の向上」をテーマに精力的に執筆・講演活動も行っている。近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』『ノート・手帳・メモが変わる絵文字の技術』(中経出版刊)、『すべての勉強は、「図」でうまくいく』(三笠書房刊)がある。

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