顧客を適切に識別し、ターゲットとする顧客の満足度と企業収益の両方を高めるための経営における選択と集中の仕組み――これが、CRMの定義です。
本連載は、坂本雅志著、書籍『この1冊ですべてわかる CRMの基本』(日本実業出版社刊)から一部抜粋、編集しています。
GoogleやAmazonなどの有名企業が一番重視しているのがCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)です。
CRMは「企業と顧客の長期的かつ良好な関係を構築する手法・戦略」ですが、ここ数年でCRMを取り巻く環境は激変しています。
ポイントカードや会員プログラムだけでなく、Amazonのレコメンド機能やGoogleの行動ターゲティング広告、携帯電話会社の割引施策まで、その範囲は多岐にわたります。
直近の動向・トレンドを踏まえ、CRMの必須知識や導入のポイントを解説した1冊です。
日本では2000年頃から盛んに重要性が叫ばれるようになったCRM(顧客関係管理)ですが、その考え方についてはさまざまな解釈があります。
例えば、顧客マネジメント(Customer Management)と表わされることもあれば、顧客関係性マーケティング(Customer Relationship Marketing)と捉える考え方もあります。
表現はともかく、人それぞれの立場で多様に展開されているCRMの定義にはいろいろな説があります。
ここではCRMを、企業が顧客に焦点を当てて行う経営戦略(CRM戦略)として捉えています。そのため、「顧客を適切に識別し、ターゲットとする顧客の満足度と企業収益の両方を高めるための経営における選択と集中の仕組み」と定義します。
つまり、顧客との関係性をマネジメントするCRMは、単にマーケティングの手法ではなく、企業全体に影響を持つ経営の仕組みということです。カスタマーサービス部門だけでなく、営業部門、製造部門、物流部門、スタッフ部門といった企業内におけるあらゆる機能が、顧客データの下に統合される必要があるわけです。
CRMとよく混同されがちな概念に関係性マーケティング(Relationship Marketing、以下リレーションシップマーケティング)があります。
リレーションシップマーケティングにもさまざまな定義がありますが、顧客と企業の間における「継続的・長期的な関係」「関係の双方向性」「関係の頻度・密度」といったようなことでまとめられます。
つまり、顧客の「企業への信頼」が高まり、企業の「顧客への理解」が深まる活動なのです。
CRMは、このリレーションシップマーケティングを実現するための仕組みであり、「顧客志向の経営」の実践プログラムであるといえます。
具体的にいうと、顧客を正しく識別することによる優良顧客の見極め、戦略的なリソース(経営資源)の配分による効率化、営業プロセスや人員体制の整備などの組織マネジメントといった企業全体に影響を持つ経営の仕組みです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.