CRMへの取り組みは、1990年代半ばぐらいから始まったといわれています。古くから顧客の識別や顧客との関係性の構築はさまざまな形で行われてきましたが、CRMの始まりは営業担当者の営業活動をITシステムで支援するSFA(Sales Force Automation)だったとされています。これにより、営業の効率化、システム化、情報共有の効率化が進みました。
また、顧客会員化のムーブメントにより、クレジットカードやポイントカード、マイレージサービスなどが、顧客の属性や購買履歴を管理する仕組みとして機能するようになりました。インターネットによる電子取引が普及してきたことが、その要因です。
コールセンター(コンタクトセンター)などの顧客接点の拡大を含め、顧客接点の多様化、顧客接点から得られるデータの管理も重要な意味を持ちます。
また、データベースの構築、データマイニング技術の進化、マーケティングオートメーションツールの登場などもあります。こうして、顧客管理の蓄積・分析・提案が簡単にできるようになり、自動化まで実現しています。
ところで、かつてのマーケティングの定説では、「顧客の声に耳を傾けていても、革新的な商品は生まれない」と考えられてきました。しかし、いまやFacebookやTwitter、LINEなどのソーシャルメディアの普及により、顧客の声に耳を傾ける「価値共創マーケティング」が主流になりつつあります。「顧客志向型商品」は、こうしたムーブメントの産物でしょう。
さらに昨今では、世の中のあらゆるデータを対象としたビッグデータ分析が重要度を増しています。データを一元的に管理・分析して、活用する取り組みは、企業活動において切り離すことができない要素になっています。
以上のような現状に至った最大の要因は、ICT(情報通信技術)の進展でしょう。ICTの進展は、顧客に情報を提供するだけではなく、企業にも革新をもたらしています。
ソーシャルメディアにおける顧客の能動的な消費活動により、顧客の趣味、嗜好や交友関係といったプロファイル情報、Webマーケティング施策への反応状況、POSや電子マネーによる購買履歴などを顧客データの範疇に収めることができます。
顧客データを分析する技術も格段に進歩し、企業側から見た顧客の分類、優良顧客の明確化が容易になっています。
ソーシャルメディアの普及は、消費者一人ひとりのマーケットへの影響力を大きくしました。
逆に考えれば、該当する商品に関心を持っている層を潜在的な見込顧客として高い精度で捉えることも可能になってきているということです。
これらを踏まえると、企業経営において、顧客の声に耳を傾ける「顧客志向」の重要性は、これまで以上に高まっているといえます。
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