5W2Hでアイデアを細かく、倍々にする方法:最強フレームワークの達人に聞く(2/2 ページ)
書籍『発想フレームワーク55』の著者である永田豊志さんが、55もある発想フレームワークの中でオススメする発想技法は「四則演算」。特に5W2Hでアイデアを細かく、倍々にするところがポイントだという。
「気がつかない困った」はどうやって探す
ゲームやエンタテインメントと実用系では若干アプローチが異なる。驚き以外の要素が必要だ。「負担になっているものをどうやって解決するかがポイント」だと指摘する。ところが負担になっていることが常態化していると、それが普通になってしまい、気付かないこともある。「携帯電話がなかったころ、何かに困っていましたか? 外出先で電話したくとも近くに公衆電話がなければ、そういうものだ、と思っていたのではないでしょうか。でも携帯電話が当り前になった今となっては、携帯電話がなかったらすごく困ってしまうでしょう」
もっともっと解消できる何かがある。それらを気付かせるような製品やサービスを生むために発想法が必要――。そんな思いで作った書籍が、冒頭の『発想フレームワーク55』なのだ。
「マーケットがリクエストしている製品やサービスもあるが、それは早い者勝ち。いわばレッド・オーシャンに飛び込んでいくようなものです。ぱっと見は見えていないけれども実は存在している負担を見つけることがブルー・オーシャンへの道です。差別化という意味でも、不要な部分や減らせる部分に着目するとビジネスとしてもうまくいくのではないでしょうか」
「撤退オプション付き」でまずは実行
永田さんが最近感心したサービスは、三三の名刺管理ソリューション「Link Knowledge」。スキャナで読み込んだ名刺情報をデータベース化して、社内外の人間関係を“見える化”するソリューションだ。「誰と誰が会ったというコンタクト情報を可視化していったところが新鮮。日経新聞の人事情報を見る必要がなくなりました。名刺というレガシーな情報交換の場に新しい価値観を持ち込んだのも良かったです」
こうした斬新なサービスはこれまで、なぜか日本ではなかなか出てこなかった。「日本と米国で発想に対する価値、社会が認めている価値がだいぶ異なります。米国は前例のないものに寛容で、アイデアだけで出資してくれるベンチャーキャピタルも少なくありません。だから革新的なアイデアや、新しいビジネスモデルも生み出しやすいし、実際に出てきます。日本の場合はアイデア自体が金を生むことは少ないのではないでしょうか。アイデアをそのままにしておくのではなく、事業化してもうけるものという意識が強いのかもしれません」
もちろん日本でも政府や自治体だけでなく民間のベンチャーキャピタルが、ベンチャー企業や起業家への資金援助はやっている。だが「人と異なるアイデアが大事ということを社会が認めていかなければならないでしょう」。
永田さんにも会社員だったころの思い出がある。「奇抜なアイデアはすぐつぶされます。つぶす人というのは必ずどの会社にもいて、ロジカルシンキングが得意。ロジカルにプランの隙を突いてきます。そういう人たちへの対応をちゃんと考えないと」
そんな時、永田さんは「撤退オプション付き」のプランを提示したという。「この試用期間で売り上げがX万円に満たなかったら」や「赤字が出たら」撤退するという条件を付けるのだ。「ダメ出しをする人も100%ダメということではありません。ただ成功する確かな理由が見えないだけ。こういう条件になったら撤退するからまずはやらせてくれ、というのは有効です」。アイデアを考えるだけなら誰でもできる。まずは実行せよ――という意味でも試してみたいアイデアだ。
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