動画と写真で確認する――裁断&スキャンのコツ(後処理編):電子書籍「自炊」完全マニュアル(2/2 ページ)
書籍を「裁断→スキャン」してデジタルデータ化する行為を、俗に「自炊」と呼ぶ。この自炊ノウハウや細かいTipsを紹介する短期連載。第4回となる今回は、ドキュメントスキャナで取り込んだ後、どういう処理をするべきなのか、どういう処理が必要なのかを、動画と写真を交えて説明する。
完成したファイルのチェックポイント
スキャンが完了すれば、読み取った原稿、つまり元の本は不要となる。ただし処分してしまったあとに読み取りミスに気がつくといったことがあると泣くに泣けない。かといって1冊読み取るたびに全ページをチェックするのは、大量の冊数を取り込んでいるとなかなか厳しいものがある。よくあるミスと、そのチェック方法を見ていこう。
ページの抜けについては、超音波センサーによる重送検知があるS1500を使っている場合は、あまり気にしなくてよいというのが筆者個人の印象だ。なにせ表裏で2枚の紙を張り合わせた表紙すら重送として検知するくらいなので、重送が検知されるたびにきちんとセットし直してやれば、抜けが発生することは皆無に等しい。どうしてもという場合はPDF上でのページ数と読み取った枚数をカウントしてやるとよいだろう。ただし白紙自動削除をオンにしていると計算と合わずに混乱することもあるので注意したい。
もしスキャン時に重送が検知されて原稿をセットし直す場合は、何枚か余分に戻って取り込んだ方が安全だ。ページがダブっていればあとから削除すれば済むし、実際にページをめくっていても「あれ、また同じページが出てきた」で読み飛ばせば済むが、欠落したページを蘇らせることはできないからだ。
ページの斜行などは、画像補正ソフトなどを使えばいくらでも直す方法はあるので、あまり気にしなくてよい。あとから修正するのは手間はかかる上に画質も低下するので、なるべく取り込み時に直しておくのが王道だが、ページそのものが抜けているよりははるかによい。
むしろよくあるミスが、フィーダにセットする裏表を間違えて、ページ順を逆にスキャンしてしまうことだ。本来はページが1→2→3→4→5となるはずが、裏表逆にセットしてしまったがために5→4→3→2→1の順に取り込んでしまったという問題である。
ページが少なければAcrobat上でドラッグして入れ替えれば済むが、これを数十ページ単位でやってしまうとシャレにならない。ページが47→48→49→50ときて次に51ページが来るかと思いきや、50→100→99→98とカウントダウンを始められた日には、ものすごい徒労感と絶望感に襲われる。裁断機を使った場合はカット面があまりにも鮮やかすぎるため、どちらがカットした面でどちらがページの端だったか分からなくなることから、こうしたミスが発生しやすい。
なので、全ページとはいわなくとも、フィーダにセットした際のブロック単位では、ページの順序をチェックしておくことをおすすめする。またこのことは、同時にセットできる枚数が多いS1500を勧める理由の1つでもある。同時にセットできる枚数が多ければ、セットの回数も少なく、ミスをする確率も低いからだ。
自炊した書籍データの保管方法を考える
スキャンについては以上だが、最後に、取り込んだデータの保管方法について考察してみよう。
本を自炊したあとに発生する可能性がある最大の事故としては、電子書籍端末の紛失・破損やHDDの故障などでデータが消失してしまうことが挙げられる。Kindle Storeなどで購入した出来合いの電子書籍であれば、端末を紛失・破損しても再度ダウンロードできる場合が多いが、自炊したファイルはそうはいかない。なくなったらおしまいである。
対策としては、1つには電子書籍端末にはデータを移動させるのではなくコピーすること。自炊した本はDRMがかかっているわけではないので、HDDに残したまま電子書籍端末にコピーすればよい。これはまあ当然だろう。DVD-Rなどへのバックアップも、データが一定量まとまるたびに行っておくべきだ。変にジャンル分けをするよりも、時系列でバックアップしていったほうがよいだろう。
もう1つは、データの保存先に冗長性の高いドライブを用いること。具体的には、アイ・オー・データ機器の「LANDISK」シリーズやバッファローの「LinkStation」シリーズといったLAN接続HDDのうち、RAIDに対応している製品を指す(ただしRAID0は除く)。ちなみに筆者が現在使用しているのは、アイオーの「HDL-XR2.0」と、バッファローの「TS-X4.0TL/R5」である。いずれも法人向けの4ドライブ搭載モデルで、自炊データの保存としては明らかにオーバースペックなので、価格重視で購入するならRAID1対応、予算に多少余裕があるようならRAID5対応の製品をおすすめする。
アイオーの「HDL-XR2.0」と、バッファローの「TS-X4.0TL/R5」。前者がRAID6、後者がRAID5で運用している。自炊データにここまで冗長性を求める必要はないが、少なくともRAID1は欲しい
さらに万全を期すのであれば、これらのLAN接続ハードデイスクを定期的にバックアップしてくれる、USB接続の外付HDDも欲しいところ。RAID1以上のレベルのHDDでは1台のドライブが故障しても残りのドライブからデータを復旧させることが可能だが、落雷などによって全ドライブが壊れてしまう可能性はなくはないし、それ以外にもファイルの加工中に誤って削除してしまう可能性もある。
1週間に1回程度、LAN接続HDDから外付けのUSBHDDに全データをコピーする設定にしておけば、データを消失する危険性はかなり低下する。もちろんそのためには、LAN接続HDD側に外付ドライブへのバックアップ機能があることが前提になる。
次回は、KindleやiPadなど、電子書籍端末ごとの自炊データの扱いについてみていきたい。
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