今日の「不満リスト」は宝の地図:新規事業アイデアの授業
ビジネスの基本は、顧客に価値を提供することです。顧客が感じる価値誰もがジョブズになるための最初の一歩は、自分の感じる不満をピックアップすること。こうしてできた不満リストは、いわば宝の地図なのです。
ビジネスの基本は、顧客に価値を提供することです。顧客が感じる価値誰もがジョブズになるための最初の一歩は、自分の感じる不満をピックアップすることです。
毎日の生活で感じる不満をメモにしよう
不満と言っても別に身構えて考えるものではなく、なんでも構いません。日常的に感じた不満をどんどんメモしましょう。どんなものがあるでしょうか?
- 借りたビデオを返却するのが面倒くさい
- 毎日の買い出しに行く時間がない
- よいアイデアがあるのに資金がない
- 掃除機が目詰まりを起こして吸引力がなくなった
……などなど、誰でも感じる日常のさりげない風景に宝の山は眠っています。
例えば「レンタルビデオの返却が面倒くさい」という不満をなくすために「月額固定の借り放題ビデオ」のビジネスが生まれました。米国のリード・ヘイスティングズは、自分あてのビデオの延滞金の請求書を見て、返却していないことを反省するどころか、返却忘れや延滞金といった不便や不満を解消する新しいビデオレンタルのサービスができないかと考えたのです。そして、月額借り放題の郵送型DVDレンタルサービス「Netflix(ネットフリックス)」を立ち上げ、瞬く間にビッグビジネスに成長させました。
大手スーパーのサミットは、買い出しの手間を省くための「ネットスーパー」ビジネスで大きな成長をとげています。子育てや仕事で食材を買いに行く時間や体力的な負担をなんとか省きたいというニーズは根強いものがあります。
アイデアはあるけど資金の集め方が分からない人たちのために「READYFOR?」や「CAMPFIRE」などの「マイクロファンディング」「クラウドファンディング」という仕組みが生まれました。こうしたマイクロファンディングのおかげで、自分の作りたい製品や成し遂げたいプロジェクトに必要な資金調達のお願いを簡単に呼びかけられるようになりました。
実は筆者も、カンボジアに学校を作るプロジェクトをREADYFOR?で知り、協力できました。プロジェクト発案者は、ネット経由の応援団の力を借り、必要資金の500万円を獲得できたのです。
家電に目を向ければ、ジェームズ・ダイソンは自分自身が感じた「フィルタが目詰まりを起こすため交換が面倒」という不満を解消するため、自らサイクロン掃除機を開発し。ダイソン氏は、同社のイノベーションの原動力は「利用者の怒り」だといっています。
どのような商品やサービスであっても、顧客のニーズを満たすものでなければいけません。ニーズとは、顧客の不満や不安を解消するものか、顧客の幸福感を増幅させるものでなければいけません。特に強い不満、不安、不便を解消する方法は、高い顧客価値をもたらします。
不満の原因は、サービス提供者側の視点から
商品やサービスにおける利用者の不満は、サービス提供者側の都合によるものです。あなたがビデオを貸す側の人間であれば、期限を決め、それを超過したら延滞金を請求するのは当たり前だと思うでしょう。借りた利用者が店に返しにくることにも、何ら疑問を感じないでしょう。
「利用者の視点」、新規事業アイデアを考える上でもっとも重要なポイントです。利用者の視点を持つためには、自分自身が生活のなかで「不」に対して敏感にならなければいけません。固定観念や常識によって「不感症」になってしまうと、こうしたビジネスチャンスを逃してしまいます。自分自身のアイデア生成装置にブレーキをかけている常識は、それ自体を強く、強く意識することで、逆にとらわれることがなくなります。(※前回の「常識」ピックアップリストが役に立ちます)。
さあ、今日はどんな不満が見つかるでしょうか? 発見したものを、どんどん記録していきましょう。そのメモは、ビジネスチャンスの眠る宝の地図となるはずです。
集中連載「新規事業アイデアの授業」について
連載「新規事業アイデアの授業」は、5年にわたる人気講演「新規事業アイデアを生み出す実践フレームワーク」(講師:永田豊志、提供:Nアカデミー)から一部抜粋し、編集したもの。
「図解思考」シリーズや「最強フレームワーカーへの道」でおなじみの著者・永田豊志が、新製品や新サービスなど新しいビジネスを生み出すためのアイデアづくりに役立つフレームワークを解説。映像学習にありがちな受動的な視聴ではなく、「発想シート」に視聴者がアイデアを書き込んで添削を受けるというインタラクティブなEラーニングになっているのが特徴となっている。
著者紹介:永田豊志(ながた・とよし)
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
ビジネスマンの「知的生産性の向上」をテーマに精力的に執筆・講演活動も行っている。近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』『ノート・手帳・メモが変わる絵文字の技術』(中経出版刊)、『すべての勉強は、「図」でうまくいく』(三笠書房刊)がある。
連絡先: nagata@showcase-tv.com
Webサイト: www.showcase-tv.com
Twitterアカウント:@nagatameister
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 筆者別記事一覧:永田豊志関連記事
勉強熱心に見えて「大変残念な人」
本や講演を聞いた時に「いい話だった。役に立ちそうだ」と思っただけで、実際には実行しない人。私は「大変残念な人」だと思います。宝の地図はみなさんの手にあるのですから、後は宝を探しに出かけるかどうかだけです。
商品の一生を「図解思考」で見極める
新規事業を起こす時に考えたいことがいくつかあります。その1つが商品やサービスのライフサイクル。今は投資の時期なのか、それとももうかる時期なのか、はたまた事業撤退の時期なのか――。
プレゼンの構想図を描いてみる――「図解プロット」で上司に新規事業を提案する
プレゼンのアウトラインを固めるために必要なのは、まず構想図を完成させること。今回のお題は「新規事業の提案」です。一緒に考えて見ましょう。
プレゼンの構想図を描いてみる――「図解プロット」で引っ越し問題を解決
プレゼンのアウトラインを固めるために必要なのは、まず構想図を完成させること。今回は、その構想図の「図解プロット」を用意しました。読者のみなさんと一緒に埋めながら、問題解決に挑戦してみたいと思います
図解思考がプレゼンを強くする
「図解思考」は、誰でもすぐに実行できる思考方法。「四角」と「矢印」を使って、情報を整理し、伝えるシンプルな技術。アイデアメモからプレゼンテーションに至るまで、さまざまなビジネスシーンで活用できます。特に図解でプレゼンの構想を練るプロセスを「図解プロット」と呼んでいます。

