日常の「不」を解消せよ!?:トップ1%の人だけが実践している思考の法則(2/2 ページ)
人はポジティブなものを提供されるよりも、ネガティブなものを解消してくれるもののほうに対価を支払いやすい特性があります。あなたがビジネスプロデューサーなら、「不」をもっと意識して生活し、そこからビジネスチャンスを見つけるべきです。
ネガティブを解消するビジネスはものになりやすい
ところで、ヘイスティングス氏は日常的な「不」に着目し、これを解消するモデルを思い付いたわけですが、これは何も特別なことではありません。私たちは生活する中で、また仕事をする中で数々の「不」を体験しています。体験しながらも、「不」に慣れてしまったことでその解消ニーズを感じにくくなっているだけなのです。
あなたの考える「不」の付くものをピックアップしてみましょう。「不安」「不満」「不信」「不当」「不具合」「不確実」「不道徳」「不義理」……世の中には、数えきれないほどの「不」が存在します。これを解消するようにサービスを考えたり、改善を行ったりすることが、顧客満足度を高め、あなたのビジネスに利益をもたらすのです。
あなたがビジネスプロデューサーなら、「不」をもっと意識して生活し、そこからビジネスチャンスを見つけるべきです。人は、ポジティブなものを提供されるよりも、ネガティブなものを解消してくれるもののほうに、対価を支払いやすい特性があります。
だから、あなたの顧客にどんなことで困っているのか、何を不満に思っているのかを聞くことが最初の一歩です。自分の頭だけでアイデアをひねるよりも、顧客のもとに直接足を運ぶ方が何倍も早いものです。
2つの利用者をつないで不満を解消させるプラットフォーマー
顧客の「不」を解消するのがビジネスになるのだとしたら、異なる顧客の不満を同時に満たせれば、もっと大きなビジネスに育つはずです。
リクルートホールディングスは、就職、不動産や車の購入、結婚といった人生のターニングポイントで、それにかかわる「買い手」と「売り手」をつなげる情報ポータルを構築することで、非常に高い収益を得てきました。買い手の「自分に合うものがどこにあるのか分からない」不満と、売り手の「顧客にアピールする機会がない」双方の不満をつなげるブリッジとして機能しています。
従来は情報誌、現在はインターネットと媒体は変わっても、情報を提供したい側と探す側のお見合いサービスを行っていることに変わりはありません。リクルートのように、提供側と利用側の双方に対して情報を集約することで、参加者全員の便益を高めるような「場」の提供を行う企業を「プラットフォーマー」と呼びます。従来は情報誌などを配布するなど、非常にコストの掛かる手段しかありませんでしたが、ネットというほぼ無料の提供手段が普及したことで、プラットフォーマービジネスは、さまざまな分野で百花繚乱(ひゃっかりょうらん)の状態です。
必ずしも「不」が見えない場合もある
「不の解消」を企業理念にかかげている日本企業もあります。化粧品やサプリメント大手のファンケルです。「不安を安心に、不快を快適に、不満を満足に変える」という同社創業者である池森賢二氏がかかげたこの言葉は、顧客満足度向上を追求し続けるファンケルのDNAとなっています。
しかし最近は、長引く不況と顧客ニーズの多様化によって「不」が見えにくくなっているといいます。顧客が商品選択の際に、比較や検討に時間がかかりすぎたり、不景気の中で買うという行為に後ろめたさを感じたりするようになっているからです。
そのため、ファンケルでは「ITを駆使してCRM(顧客リレーションシップ管理)に磨きをかけ、顧客が感じている潜在的な「不」を読み取り、それらを解消していくことが重要」(同社情報システム部の中島部長)としています。つまり目に見えた「不」ではなく、顧客の感じている無意識の、潜在的な「不」を見つけることで、新たな顧客価値を生み出そうとしているんですね。そんなファンケルは、2012年度顧客サポートランキング(日本ブランド戦略研究所調べ)でナンバーワンを獲得しています。企業にとって顧客の「不」を効率的に発見できる仕組みを持っていると、非常に強いですね。
人間は環境への耐性が優れているため、不安や不満を感じてもすぐに慣れてしまいます。そのため、ビジネスにできそうな日常的な「不」は見過ごされがちです。
高度なCRMシステムがないとしても、普段からちょっとしたシーンで感じた顧客ニーズ、自分自身の感じた「不」を書き留められるようにメモする習慣を身に付けるだけでも、大きなチャンスにつながるはずです。
ビジネスプロデュース力のヒント
- 仕事の最中や日常生活の中で、ふと感じる「不安」「不満」「不便」といった「不」を見逃さないこと。それらを解決することが、大きなビジネスチャンスにつながる。
なお本連載の基となった『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』(永田豊志著、かんき出版刊)では、5Aサイクルの具体例として、グーグルのほか、ダイソン、アマゾンなど今をときめくイノベーティブな企業群のエピソードを18のケースストーリーで紹介しています。
集中連載『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』について
本連載は2012年12月19日に発売した『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』(永田豊志著、かんき出版刊)から一部抜粋しています。
- なぜ、Amazonは「大量の小口注文」をさばけるのか?
- なぜ、Googleは「独自の検索システム」を編み出せたのか?
- なぜ、ディズニーランドは「夢」を売ることができるのか?
- なぜ、ダイソンは「羽根のない扇風機」を開発できたのか?
本書は、イノベーションを起こして、ビジネスで勝ち残るための「思考法則」についての解説書です。これからの働き方は、大きく変わります。今まで通りに目の前にある仕事を頑張って働くのではなく、新しいイノベーションを起こしてソリュ―ション(問題解決)することが不可欠になります。本書はあなたの仕事にイノベーションを起こすために、トップ1%のできるビジネスマンだけが実践している「思考の法則」を著者、永田豊志氏が見つけ、分かりやすくまとめたものです。
「営業」「企画」「経理」「総務」「財務」「マーケティング」――など、あなたが何を専門に従事しているかはまったく関係ありません。すべてのビジネスパーソンに必要な「思考」だからです。ぜひ、本書を読んで、変化の激しい時代に、あなたがたくましく生き残れるよう役立ててください。
著者紹介:永田豊志(ながた・とよし)
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
ビジネスマンの「知的生産性の向上」をテーマに精力的に執筆・講演活動も行っている。近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』『ノート・手帳・メモが変わる絵文字の技術』(中経出版刊)、『すべての勉強は、「図」でうまくいく』(三笠書房刊)がある。
連絡先: nagata@showcase-tv.com
Webサイト: www.showcase-tv.com
Twitterアカウント:@nagatameister
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