「上場ゴール」か、成長途上か LINEは上場初日の評価を超えることができるのか(3/3 ページ)

» 2016年08月18日 06時00分 公開
[青柳美帆子ITmedia]
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LINEの大きな課題とは?

 LINEの成長余地は十分にありそうだ。では逆に、LINEの課題は何か。

 「LINEだけではなく、スマホアプリの全てにいえることだが、App StoreとGoogle Playという2大ストアがあることで、グローバル展開が容易にできるとともに、逆に競争が激化しているという面がある」(滝澤さん)

 かつて「mixi」などのSNSで指摘された「ネットワーク効果」(ユーザーが増えれば増えるほどサービスの価値が高まる)はメッセージアプリの特徴でもある。ユーザー利用者が増えれば、そこにさらに利用者が集まっていく。つまり、市場で高いシェアを得たアプリがどんどん強くなっていくのだ。

 トップアプリの牙城を崩して、2位以下が“下剋上”するのは非常に難しい。このため、日本ではLINEの地位は揺るぎないが、同じ理屈で、FacebookとWhatsAppの米国や、WeChatの中国でLINEが大きな成功を収めるのは難しいと言える。

 LINEがトップを握るのは日本のほかは台湾とタイで、インドネシアでも首位をうかがう。「LINEの戦略としては、まずは1位を獲っている国内を優先。そしてユーザー数が増えている台湾、タイ、インドネシアを伸ばしていく――というものが考えられる」(滝澤さん)。LINEの出澤剛社長は上場時、シェア首位の4カ国・地域に絞っていく方針を明らかにしている。

国別のLINEのダウンロードランキング推移(ソーシャルネットワーキングカテゴリー)。日本、タイ、台湾ではトップを走る。インドネシアでもトップ5に食い込むように
売り上げランキングでも日本・台湾・タイ・インドネシアでは好調

 現在、LINEの売り上げは7割が国内。残り3割を占める海外展開の成否も今後の成長を左右しそうだ。

この企業の上場に注目

App Annie(アップアニー)の日本・韓国担当リージョナルディレクター 滝澤琢人さん

 LINEは上場で1320億円を調達した。設備投資や負債返済に充てる一方、成長に向けたM&A(合併・買収)にも活用する考えを明らかにしている。「マーケットの拡大に使うのか、サービスの拡充に投資するのか……LINEに今後“強力なライバル企業”が出てきたときに、どのような対応をするかが分かる」と滝澤さんはみる。

 LINEの上場はアプリ業界にとって大きなニュースだった。今後、アプリ業界でLINEと同様に上場が注目される企業は?

 「『上場していないのが意外なほど』といわれているのが配車アプリサービスを提供するUber(ウーバー)。非上場だが企業価値はGeneral Motorsやホンダを抜き、時価総額ランキングの上位に食い込んでいる」(滝澤さん)

 また、メッセージアプリの次のトレンドとして注目されているのが“動画を使ったコミュニケーション”。中でも、モーションセルフィーで動画をリアルタイム処理できる「SNOW」は、LINEと同じく韓国のNAVERを親会社とするCamp Mobileが開発し、10代を中心に大きな支持を得ている。

 「海外ではチャットアプリのSnapchatが若い層にウケて、マーケッターにとって無視できない状態になっている。新しいコミュニケーションを生み出し、急成長している企業は、今後突然トップになることが考えられる」。SnapChatは日本法人を設立するといううわさもあり、要注目だ。

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