ところで、そもそもなぜきっぷに番号が振られているのか。個別の番号がなければ印刷の手順も減り、コストを下げられる。しかしきっぷの番号は必要だ。記事の中で、JR北海道は「売り上げや在庫の管理をするため」と説明している。1日にそのきっぷが何枚売れたか、その集計に使う番号だ。
例えば、前日の締めで一番上にあるきっぷの番号が 0510 とする。これを帳簿に記載して、翌日の締めで一番上の番号を見ると 0512 だった。そうすると、「0512 - 0510 = 2」となって、その日に2枚売れたと分かる。番号を帳簿に記載するときは、きっぷの裏面、つまり番号の面に赤鉛筆などで線を引く。次の日は、この線のないきっぷだけを帳簿に記録すればいいので、全てのきっぷの番号を調べる手間を省ける。きっぷの裏に線が2本あれば「2日間売れなかったきっぷ」というところまで分かる。きっぷのコレクターの中には、この締めの線が多いきっぷを喜ぶ人もいる。
きっぷの番号のもうひとつの意味は、駅員の不正防止だ。この話は180年も昔にさかのぼる。英国で鉄道が営業を始めたとき、きっぷではなく、乗客ごとに伝票を作っていた。乗車駅、下車駅、乗客の氏名、運賃を調べて、全て手書きで処理していた。しかし、列車の運行本数や連結車両数が増えると、この処理ではさばききれない。
そこで、トーマス・エドモンソンという駅長が、あらかじめ行き先ごとにきっぷを印刷して、発行時に日付を入れる方式のきっぷを考案する。駅の数だけきっぷがあり、ズラリと並べてすぐに取り出すために、きっぷは伝票より小さくなった。ただし、小さい紙片はなくしやすいので、堅いボール紙を使った。これが硬券きっぷの始まりだ。エドモンソン式乗車券と呼ばれている。
エドモンソンは特許を取り、世界共通の規格となった。きっぷの裏の番号は伝票乗車券時代の名残で、駅員のきっぷの着服を防ぐために入れられた。180年間もきっぷの裏には番号があり、集計や不正防止の手段だった。鉄道職員にとって、きっぷの裏に番号があり、番号順に売るという手順は当たり前のことだった。
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